約 774,142 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/831.html
あの人になってみたい、という経験は、誰でも1回はあると思う。 相手の容姿や身体能力、頭脳はもちろん自分にはない特技を持っていたり、 「この人のことをもっと知りたい」という恋愛感情からくるものもあるだろう。 確かに夢見がちではあるが、決して変なことではない。 これで変というなら我が団長は変態を通り越して とっくに天然記念精神異常者として博物館に鎖で繋がれているところであろう。 俺だって無責任かつ非常識な横暴を受けて、幾度となくロープの向こう側の奴にハイタッチをかましたいと思ったさ。 だが俺は、重要視するところは 他人と替わりたいか ということではなく 誰が誰と替わりたいか だと思っている。 そりゃクラスメイトAがクラスメイトBに替わりたい、と言うだけならば俺は何も言わないが、 物静かで上品なお嬢様がオタクに憧れてたら誰だって目を丸くするし、 某奇妙な冒険漫画家が「あぁ、○×Hの○樫になりてえ」 とか言いだしたら日本漫画会に衝撃を与えるだろう。 それくらい、 誰 が 誰 になりたいかというのは重要だと自信を持っていえる。 とまあ、ここまで長々と語ったのは 今この学校で繰り広げられる状況の説明をしているからであって、 決して現実逃避をしているわけではない、多分。 が、偉大なる逃避世界の住人となるかもしれん前に、 この状況に至るまでの経緯をお伝えしよう。 それに気づいたのは今日の朝だが、事の始まりは昨日の放課後かららしい。 春らしさに磨きがかかってきたある日のことである。 俺はいつもの部室でもはや後光が見えつつあるメイド女神様の出される聖水を飲んでいたところだった。 ああっ女神さま!もはやお茶だけで国内紛争を止められそうな域にまで達しております。 と、そんな感想を漏らしながら、いつもの古泉と俺による白星生産ゲームをしている最中に、 PCの画面とにらみ合っていたハルヒが急に顔を上げて、こう言い出した。 「ちょっと皆、もし1度だけ他人と替わることができたら誰になってみたい?」 ……どこのWebページを見てたのかしらんが、今度は何に影響されたんだ。 大方、「オレがアイツでアイツがオレで」といった人格入れ替わりSSでも見てたんだろう。 「みくるちゃんっ!あなたならどうする?誰になってみたい?」 「ふぇっ? え、ええと………その、先生になってみたいです。 人に何かを教えるのって素晴らしいじゃないですか。」 朝比奈さんが眼鏡をかけチョークを持って黒板にまるっこい字を書いている場面を想像した。 貴方ならそのスカートからチラホラ見えている足と胸元の谷間のおかげで 保険の授業ではないのにも関わらず下半身がやばいことになりそうです。 「そういう希望職業を聞いてるんじゃないのよ! 有希は?誰になりたい?」 「……私は現状のままで満足している、不満はない」 「……まあいいわ、ところでキョン!アンタは一体誰に───」 と、俺に話を振る前に、ドアから一人の闖入者によってセリフを遮られた。 「おいーっす、キョンいるか?」 無論、俺をこのあだ名で呼び、なおかつ成功しないナンパ道を突き進んでいる男と言えば、当然谷口しかいない。 「ちょっと、今大事な会議中なのよ、何か用があるなら部活が終わったあとにしなさい」 大事か?これ。 「そう言うなって、すぐ終わる。 ……キョン、お前あの新作RPG買ったんだってな、 国木田から聞いたぞ。 もうどうせヘビーゲーマーのお前の事だから終わってるだろ?俺を優先的に貸してくれ」 新作RPGというのは俺が先月SOS団の財布となりつつある財布から なんとか捻り出してその日にもらった小遣いを足し、ようやく買った今話題のゲームである。 あの独自の世界観と斬新なストーリーが多くのユーザーの心を惹きつけている、 というか俺もその一人である。 いえいえ、決してヘビーゲーマーではありませんよ、 偉大なる16連射の達人の戒めを守ってゲームは1日5,6時間までにしております。 どちらも無視してよかったが、俺は別に独占欲が極端に強いわけでもないし、 理由もなく貸さないというのはこいつはともかく 他の奴らのイメージを悪化させることになってしまうので 「仕方ねえ、明日持ってきてやるよ」 と、まあ友達らしい返事をしてやった。 「流石キョン、男の友情ってもんを分かってる!持つべきものは心の友だ!」 どこの年中横暴小学生だお前は、おい肩組むな、暑苦しい。 「んじゃ、邪魔したなキョン。その大事な会議とやらを続けてくれ。 WAWAWAワンダフル~」 と、谷口が出て行くまでのやりとりを見届けた団長は、 何故か少し不機嫌になりながらこちらを睨んでいた。 そして、俺に向かって口を開く── パタンッ。 ──前に部活動が終了した。 何か言いたげだったハルヒは、やがて「ふんっ」と鼻を鳴らしさっさと下校してしまった。 「おやおや、聞かれなかったようですね。 ……ところで僕も気になります、貴方は誰に──」 ニヤケ仮面の貴公子を無視し、さっさと部室から出た。 ……と、まあこれが今回の事件の発端らしい。 確実に俺のせいではないことは確かだ、いやマジで。 だが、ハルヒの変態パワーに”何か”が引っかかったことは紛れもない事実である。 繰り返す、俺のせいではない。 いつもの坂を上がり、教室のドアを開いた俺の目に飛び込んできたのは、 「……おい谷口、そこハルヒの席だぞ。 席ごと窓から放り投げられない内にさっさとどいたほうがいい」 俺の後ろの席に座って窓の外を眺めている谷口だった。 大方、ゲームを早く受け取りたいというアホな考えだろう。どうせ家に帰るまでできやしないのに。 だが、振り向いた谷口は、いつものバカ面ではなくどこか不機嫌な顔つきだった。 「はあ?谷口?まだアイツは来てないわよ」 ……確か谷口の一人称は”オレ”だったはずだ、それに”アイツ”というのは第三者を指すべき言葉である。 「いや、お前何言ってんだ。 おふざけにしちゃ度が過ぎ──」 「おーぅおはよう我が心の友よ!ゲームは持ってきてくれたか!」 るぞ、と言おうとした俺の背後で、谷口らしい口調の声が聞こえた。 だが、この聞きなれた声は……。 「……ハルヒ?なんでお前がゲームを待望してんだ?あとそれ谷口の鞄じゃ……」 「はあ?オレがオレの鞄持ってちゃおかしいか? それより約束忘れたわけじゃないだろうな」 何が何だかさっぱり分からんため、 とりあえず谷口よりは権限が高いであろうハルヒにそれを渡してみた。 「サンキュー!やっぱりお前は心の友だ!」 と、ゲームを受け取ったハルヒがオーパーツでも発見したかのような笑みで 昨日の谷口のように肩を組んできた。 おいっ、ちょっと待て!ハルヒお前はこんな事をするやつだったのかいやそれよ りも今俺のわきのあたりに当たっているのは朝比奈さんサイズとまではいかないが結構ボ リュームのあるそれで俺は健康な高校生であってそんなことをやられると───!!! と、頭の中を駆け巡る脳内物質が列を崩された蟻みたいになっていると、 「アンタ達、朝から暑苦しいわよ。もうすぐ授業なんだからさっさと席に着きなさい」 何故か命令口調の谷口が俺たちにそう言った。 「チッ、相変わらず偉そうな奴だ。 おいキョン、この礼はまた必ずしよう。それじゃな!」 と、ハルヒが谷口の席に着いた。 ……そうか、ドッキリか。いやあおじさん見事に呆気に取られちゃったよアッハッハ。 と、ハルヒと谷口が手を組むなどチーターとヒポポタマスが 共同戦線を張るくらいありえないことなので、この考えを頭から放出した。 「なあ、谷口。これは一体どういう──」 ガラッ、というドアの開く音で、今から始まる授業に備えるため俺の会話は強制終了した。 だが 「起立、礼! ……よーし、それじゃあ今日は教科書53ページからだ。おい国木田、読んでくれ」 現れたのは、ハルヒ曰くハンドボールバカの岡部ではなく、 「あ、朝比奈さん……?」 そこには見つめているだけで何かを見出してしまいそうな可憐な上級生がいた。 その姿は、昨日のハルヒの発言により俺の脳内に自動作成されたまさに理想系の…… 「ちょっと、何変なこと考えてるのよ。 斜めから後ろからちょっと見ただけで分かるような間抜け面よ」 おもっきり不機嫌そうな谷口に指摘された。 ……こういう理解不能な現象が起きているときに有効なのは、 そう、現状維持で下手に手を出さず大人しく時が過ぎるのを待つことである。 放課後になれば、あの俺の悩み会話相談室の会長であらせられる万能宇宙人が説明してくれるさ。 時々チラホラ見えてしまう朝比奈先生の谷間や生足にニヤニヤしながら、 放課後まで待てばなんとかなると信じ待機状態を保っていた。 そして、昼飯だ。 「──んでよぉ、女ってのはやっぱり鎖骨だよな、鎖骨」 「……相変わらず谷口はマニアックなところをつくね」 と、どこの小学校の5年2組だと思うようなトークを繰り広げているのは、 俺の横に机を並べて弁当を食っているハルヒだ。 結局ずっと後ろの席に座っていた谷口は、チャイムがなるとさっさと教室を出て行ってしまった。 というかハルヒ、頼むからガニ股はやめてくれ。 京兄ちゃんでさえ守り続けてきた絶対領域神話が崩壊するぞ。 「だから、女ってのはそういう ──おっと」 コロコロと俺の足元あたりに箸が転がってきた、話に夢中で落としてしまったのだろう。 「あぁもう、しゃーねーなぁ」 と、少し舌打ちしながら俺の足元の落下物を拾おうとして ガタッ 「のぁっ!?」 イスに座ったまま拾おうとしたのが災いしたのか、ハルヒはバランスを崩して…… 「うおっ! ……いっつ、手捻っちまった。 おお、すまん大丈夫かキョン」 俺に覆いかぶさるように倒れてきた。 当然受けようとした俺は仰向けになって、ちょうどハルヒが押し倒したような位置関係になっている。 で、当然ハルヒの胸元の強調部分が俺の胸板と…… うん、柔らかいな。まあ朝比奈さんには劣るがそれなりの盛りはある。 俺の触覚は胸板にかかる微弱な圧力を捕らえ、 俺の嗅覚は眼下にあるハルヒの髪から漂う少しいい匂いを……いいにお…… 「──ってうおぁあああああっ!!! ははははっ、早くどけぇっ!」 俺は半ば突き飛ばすようにハルヒの体を遠ざけた。 「いてっ、な、何慌ててんだ?」 「どうしたのキョン。卵焼きでも潰しちゃった?」 谷口と国木田が、不思議そうに俺の顔を覗き込む様子が声の調子で分かる。 だが今の俺はそんなことに応答している余裕はなかった。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1616.html
俺が涼宮ハルヒと出会ってどれくらいの月日が経過したのだろうか。 コレまでも、寝てる間に閉鎖空間に連れ込まれたり、時間を巻き戻されて 何度も八月を体験したり…… 寝起きドッキリには多少どころか多分に耐性が出来ていると思っていたのだが…… 「何だコレは……」 ――――目を開けるとそこは不思議な世界でした どこのジブリかと自分自身に突っ込みを入れたくなる。 さて、冷静に現状を整理してみようか。まず第一にここは俺の部屋じゃない。 カレンダーも、MDプレイヤーも、更には教科書までもがこの空間には存在しない。 ログハウスのような木の質感がはっきりと見て取れるこの部屋にあるのは 俺が今まで寝ていたこのベッドと、壁にかかっている地球のものかもわからない不思議世界地図、 後は小さな、洋服いれとも小物いれともつかない棚だけだ。 第二に、起こしに来た妹の服装が、少なくとも一般的な日本人が着るようなものではなくなっている。 例えるなら、カカリコ村のコッコ姉さんみたいな服装とでもいえばわかりやすいだろうか。 わかりやすくなくとも今の俺にはそうとしか表現できないな。 「ほら、キョンくん早くー。ごはん冷めちゃうよー?」 わかったわかった。今から行くから先に行ってなさい。 はーい、と間延びしたいつも通りの声で返事をして、俺の部屋の戸を閉めると、 妹のとたとたと階段を降りるような足音が聞えてきた。 少なくともここは二階建て以上らしい。 階下に向かうとそこにはまた見慣れない光景が広がっていた。 両親の姿には変わるところがないのだが、家も、食事のタイプも全く違う。 ここで食パンにシリアルでも出てきたのなら俺はもっと安心できたろうに、 今朝のメニューは見たこともない魚の丸焼きにキノコや木の実のサラダだった。 ……不味くはないが、なんともいえない不思議な感じがした。 さて、部屋に教科書がなかったから俺は学校に行かなくても良いんだよな? 食事のメニューから考えるに畑仕事や魚捕りはやらされそうだが。 「キョンくんは今日から『まおー』をやっつける冒険にいくんだよね?」 妹よお前は何を言っているんだ?まおーはやっつけるものじゃなくて スケートリンクに見に行くものだろう。……我ながら寒いギャグを思いつくものだ。 オヤジ選手権があればコレだけでトップスリーには食い込めることだろうきっと。 「えー?キョンくんこそ何言ってるの?剣も買って、一緒に冒険に行く友達も見つけて、 昨日あんなに張り切ってたのにー」 やれやれ、俺の知らないところでストーリーはそんな風に進んでいるらしい。 この世界の異常の心当たり。まぁ心当たりも何もこんなことが出来るのは俺の知る限りハルヒしかいない。 どっかの学園ギャグマンガみたいに今までの生活全てが俺の夢だといわない限りな。 この話の筋書きを書いたのはハルヒだ。そうするとこの流れに乗っかればそう遠くないうちに ハルヒに出会うことは出来るだろう。乗り気はしないが、 ここはとりあえずその“お友達”とやらと合流して冒険の旅に出るとしようか。 まずハルヒに出会わないと話が進まない。魔王と戦うなんてのはゴメンだけどな。 剣とかいう凶器を取りに一旦部屋に戻り、 タンスの中から見つけた友達との待ち合わせの場所を書いたメモと 薬草(らしきもの)を道具袋にねじ込んだ俺は、『世界樹の森の広場』なる場所を目指した。 村のヒトに話を聞くとそこは村を出て北東に行ったところにあるらしい。……魔王に村人に タンスから薬草、いよいよ世界がドラクエめいてきたな。 もしかして道中、モンスターなんかが出てきたりするのか? 善良な一般高校生に生き物の殺生なんかさせるなと言いたいね。どっかの愛護団体から訴えられてしまうじゃないか。 物語的に運が良いのか悪いのか、目的地の広場へと続く道程にモンスターが出てくることはなかった。 ……まぁ遠くにそれらしき影はチラチラと伺えたのだが、そこは上手くスルーしてきた。 目立たないことと現状維持は俺の得意技だ。 驚くほどスムーズに広場へと到着し、後は友達とやらの到着を待つことになった。 ここに来てふと疑問が浮かぶ。なぜハルヒは眠っている間にこんな世界を作り出してしまったのか。 今までのケースから見ると、ハルヒはこの世界の住人になることを強く願ったということになる。 たしかにハルヒの望むカタチではなかったかも知れんが、SOS団の面々でわいわい遊ぶのに 大分満足していたと思うのだが。俺にはハルヒの気持ちがこれっぽっちも想像できないね。 森の、そう遠くない場所から、ざっ、っと足音のようなものが聞こえた。 俺は腰に引っ下げた剣に手を伸ばしつつも広場の木の陰に隠れて、足音の聞こえた方を伺った。 ……人影が見える。 例の冒険の“友達”か? いや、遠すぎて判断できない。 仲間の可能性は高いが、同様に敵――つまりはモンスター――である可能性も否定できない。 見慣れない世界だからこそ、不測の事態に備えて最大限の警戒を。 それにしてもあの人影が仲間だったとして、それが谷口だったらイヤだな。 頼りないことこのうえない。 無駄なことに俺のささやかな脳細胞が活動をしている間に、 その人影は俺のほうへと大分近寄ってきていた。 ……はっきりとは見ていないが、あの体格なら女だな。 露出の多い服装だから、俺のゲーム知識から考えうる役職からして女戦士といったところか? 武器の携帯は見られない。 どうやら向こうに敵意は無いようなので、 警戒はしつつも俺は木の陰から一歩足を踏み出した。 ―――そこにいたのはハルヒだった いつか会うだろうとは思っていたがそれがこんなに早くに実現してしまい、 俺はひどく狼狽した。 しかしそれは向こうも同じ様子、きっとハルヒも俺と似たようなことを考えていたのだろう。 「なっ……ハルヒ!この世界は何なんだよ!?」 「そんなの私にだって解るわけないでしょ!」 そうだった。古泉曰く、コイツは自分に力の実感のない不完全な神様みたいなもんだったな。 コイツに聞いたところでことの真相が解るわけでもない。 さて、これからどうしようか。 「そんなの知らないわよ。あたしだって朝起きたらいきなりこんなになってるし、 一体世界はどうなっちゃってるわけ?」 根本の原因はお前にあるんだよという発言を喉の奥に飲み込み俺は軽く思案してみる。 「とりあえず長いものには巻かれるということで一緒に旅でもしてみるか?」 「なんでキョンなんかと一緒に旅をしなきゃ行けないのよっ!それにアンタどことなく 弱そうだし、モンスターに会ったら一発でやられそうじゃない」 ぐっ、戦いを避けていた俺としては全く否定ができない。 しかしそういうお前はどうなんだ?見たところ戦士っぽいが剣も何も持っていないじゃないか。 「私は武闘家よ。アチョーってなかんじで敵をバシバシやっつけちゃうわけ」 なるほど合点がいった。モンスター相手にドロップキックを笑顔でぶちかますハルヒの姿が 容易に想像できる。 それにしても衣装と役職が全くかみ合っていないな。まぁお前らしいといえばお前らしいが。 「一応タンスの中に武闘家の服もあったんだけどね、可愛くないからやめたのよ。こっちのほうが 私としては気分が出るし」 それはわかった。で、結局行くのか行かないのか、どっちなんだ? 「行くわよ。アンタがココにいるってことは、有希やみくるちゃんや古泉くんもどっかに いるかもしれないし、SOS団異世界支部の結成ね!」 ……非常に心強い反面、非常に不安だ。予測される多難な前途に俺はこの言葉を送りたいと思う。 ―――やれやれだ ~To be continued?~
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/231.html
ハルヒと親父2 ー おとまりから 親父 ハルヒ、悪いが、次の土曜の夜、空けておけ。 ハルヒ 悪いがって……、親父、悪い事でもするの? 親父 するか!あとキョンも呼んどけよ。 ハルヒ いったい何なのよ? 親父 1周年だ。 ハルヒ 何が? 親父 おまえらが初エッチしてから。 ハルヒ は? え? って、何で知ってんのよ! 親父 バカ娘、語るに落ちるとはことのことだ。親父を舐めるな。あと言った本人が傷つくようなことを言わせるな。 ハルヒ 勝手にそっちが言ってたんじゃないの! 親父 ああ、そっちじゃない。知り合いの店が1周年なんだ。ほんとは1年前に連れてくはずだったんだが、予定がかち合ったな。 ハルヒ って? あ、母さんが前に言ってたような。あたしが生まれたとき、お祝いもらった? 親父 ああ。今はその娘が継いでるんだがな。 ハルヒ わかったわ。空けとく。 親父 いい心がけだ。そういう娘には、母さんのピアノが聞ける特権がつく。 ハルヒ え!ほんと? 親父 本来、3人で行くところを二人でだったからな。母さんが向こうに気を使ったんだ。 ハルヒ 他の友達、連れて行っちゃいけない? 親父 構わんが、その店終わったら自由解散だぞ。二人っきりにさせてやろうという親父心を汲む気はないか? ハルヒ ないわ。 親父 かわいそうな、キョン。 ハルヒ ほっときなさい! ハルヒ 娘のあたしが言うのもなんだけど、あのピアノは一聴の価値があるわ。 みくる すみません。その夜はどうしても外せない用事が、わたたた 長門 とても残念。 古泉 申し訳ありませんがぼくもなんです。ですが、そう遠くない将来に、また我々も聞く機会があると思いますよ。 ハルヒ へ? 古泉 たとえば、お二人の披露宴など、ふさわしい舞台とは思われませんか? ハルヒ って、な・な・何言ってんのよ、古泉君! 古泉 これは失礼なことを言いました。おや、彼が来たようです。 キョン おーす。なに騒いでんだ? ハルヒ 誰もあんたの話なんかしてないわよ! キョン あ、あのな。誰もそんなこと言ってないだろ。そういうのを語るに落ちると言ってだな…… ハルヒ うっさい、うっさい!キョン、土曜の夜、予定ないわよね?あっても空けておきなさい! キョン ああ。言われなくても空けてあるが。 ハルヒ 何で、空けてあるのよ? キョン こ、ここで言っていいのか? ハルヒ って、何言ってんの、あんたは? あ!あああ! ダメ!言っちゃダメ! キョン なるほど、そういうことか。 ハルヒ そうよ。土曜は夕方くらいにあたしの家に来てちょうだい。4人で一緒に行くから。 キョン どんな格好していけば、いいんだ? ハルヒ 別に内閣発足じゃないんだから、燕尾服まで着る必要はないわ。 キョン そんな服は持っとらん。 ハルヒ 別に普通の格好でいいわよ。お店の方は1周年だけど、あたしたちは食事するだけなんだから。 キョン 普通と言ってもな。土曜の市内探索と、日曜日に二人で出かけるのとじゃ、同じ普通でもおまえだって違うだろ。 ハルヒ あー、もう!分かったわよ。帰りに付き合ったげるから、それっぽい服を選んであげるわ。その方があたしも合わせやすいし。 キョン すまん。 ハルヒ 親父の友達の店なんだし、そんな気をつかわなくてもいいんだけどね。 キョン 親父さんの友達の店だから、気になるだろ。 ハルヒ そうなの? キョン まあな。 ハルヒ ふーん。 キョン なんだ? ハルヒ 別に、なんでもないわよ! オヤジ 母さん、ただいま。 ハル母 おかえりなさい、お父さん。 オヤジ いい匂いがするな、母さん。 ハル母 ええ、そろそろかと思って、お鍋を火にかけたの。 オヤジ ん?夕飯まだだったのか? ハルヒは? ハル母 食べて帰ってくるって。多分、キョン君が送ってくれるんじゃないかしら。 オヤジ でかした、母さん。今日はついてるな。 ハル母 お父さんたら、キョン君と会えるのがそんなに嬉しいのね。 オヤジ 嬉しいとも。感情は素直に表現した方が気持ちがいいな、母さん。 ハル母 いつも、そうしていいんですよ、お父さん。 オヤジ ところがそうもいかん。ツンデレも中年になると複雑なんだ。 ハル母 高校生でも複雑ですよ。 オヤジ さもあらん。土曜日の関係かな、あいつら? ハル母 ええ。着ていく服を選ぶんですって。 オヤジ 服なんか着てりゃなんでもいいのにな。水着を上下間違えて着ても構わんぞ。 ハル母 娘は娘なりに、彼氏は彼氏なりに、思うところがあるんですよ、きっと。 オヤジ うむ。思うだけじゃ済まんからな。母さんのピアノと、キョン付きのディナーのコンボだぞ。 ハル母 それは少し荷が重いかしら。緊張して、とちらないといいけれど。 オヤジ 母さんでも緊張するのか? 軽い感動と新鮮な驚きだ。 ハル母 さすがに、未来の息子の前ではね。 オヤジ うーむ。そう来るか。ちょっと不意を突かれたな。 ハル母 そろそろ部屋着に着替えてきてください。 オヤジ うん。正直言うと、腹ぺこなんだ。 キョン 遅くなっちまったな。 ハルヒ 夕食、食べてきたからね。電話してあるから大丈夫よ。 キョン いや、思ったのは、それじゃないんだが。 ハルヒ じゃ、どれよ。 キョン 玄関のドアを開けてみりゃ分かると思うぞ。多分。 ハルヒ なに、それ? ただいま!遅くなっちゃったわ! ハル母 おかえりなさい、ハル。 オヤジ よお、キョン。ちょっと上がっていけ。そして泊まっていけ。 ハルヒ 親父は玄関から3メーター以上下がりなさい! オヤジ 何故だ、バカ娘? ハルヒ 危険が懸念で心配が適中だからよ! オヤジ 日本語をちゃんとあやつれ。こんなに遅くまで娘につきあわせて、しかも家まで送ってもらって、そのまま返したら、礼を欠くってもんだ。 ハルヒ あんたの存在自体が、礼を欠いてんのよ! オヤジ うまいこと言う。 ハルヒ 去年、あたしが朝帰りした時は、死んだようになってたくせに! オヤジ 娘よ、それはメガンテか? ハルヒ 古いゲームの話題は、わかんないっていつも言ってるでしょ! オヤジ 時事用語で言えば、自爆テロか、と尋ねてる。 ハルヒ だれが自爆してんのよ!? オヤジ 後ろを見ろ。キョンが被弾して、HPが1になってるぞ。 ハルヒ どうしたの、キョン!? オヤジ 素でそこまでとは、我が娘ながら、ハルヒ、おそろしい子! キョン いや、ちょっと不意打ちだったというか。だ、大丈夫だ。 オヤジ 大丈夫って、感じじゃないぞ。キョン、この浮き輪につかまれ。 ハルヒ そんな小道具と小芝居まで用意して! 何考えてんのよ! ハル母 ハル、キョン君のおうちに、さっきお泊めしますと電話しておいたわ。 ハルヒ か、母さんまで? ハル母 こうなるのが、ある程度、予想できちゃったから。ごめんね。 ハルヒ うー。 ハル母 キョン君は夜にカフェインをとると、眠れない方? キョン あ、いえ、大丈夫です。 ハル母 うちも遅い夕食が済んだところなの。じゃあ、お茶を入れるわね。 オヤジ よし、おれが眠れないほど濃いエスプレッソをいれてやろう。 ハル母 お父さんは、頼みたいことがあるの。 オヤジ なんだろう、母さん? ハル母 キョン君の下着その他、お泊りグッズのリストを書いておきました。コンビニまでダッシュでお願いします。 オヤジ 母さん……。 ハル母 ハルだけが可哀想だと不公平ですから、ね。 オヤジ うー。こいつは全然可哀想じゃないぞ。 ハル母 お父さんがはしゃいでまぎらわそうとしてる悲しみは、子離れを向かえた親の特権だと思わない? オヤジ ……違いない。行ってくるか。 ハル母 ハル、ケンカじゃないけれど、あなたたち二人への不意打ちは、これで両成敗ってことで許してね。 ハルヒ わ、わかったわ。でも、キョンのうちは、大丈夫だったの? ハル母 それは信頼してもらうより他ないけれど、キョン君、おうちに電話する? キョン あ、はい、そうします。一応、自分からも連絡しておいた方がいいと思うんで。 ハルヒ この子機つかって。あんたの家の電話番号は#1の短縮でかかるから。 キョン ああ、すまん。……「ああ、おれ。ごめん……大丈夫、心配ないから。……わかってる。ちゃんとするから。ん、じゃあ」 ハルヒ どうだった? キョン 普通だ。あらかじめ連絡はしろ。そちらに迷惑をかけるな、くれぐれもよろしく伝えてくれ、とそんな感じだった。 ハルヒ ……ふう、そう。 キョン なんか心配かけたな。 ハルヒ 別に心配はしてないけど。うちのせいで、あんたが自分の家族とケンカするとか気まずい関係になると、困るから。 キョン おまえは、うちの家族に気に入られてる。おれより信頼されてると思うぞ。 ハルヒ あ、あたしのことはどうだっていいのよ。 オヤジ はあ、はあ。行って来たぞ。 ハルヒ ほんとにダッシュしてきたの? オヤジ おれがいない間に、何か楽しいことがあって見逃したら悔しいだろ。 ハルヒ あんたは子供か!? ハル母 ふふ、ありましたよ、楽しいこと。 ハルヒ 母さん! その2へつづく
https://w.atwiki.jp/kiryugaya/pages/308.html
カッパの皿 文字通り、異次元で捕獲される河童の皿。 ゲコカッパ肉うどんに添えられる。 ナルトの代わりに食べられる。 渦巻きは料理人の好みで描かれるという。 食感はお餅。むしろナルトというより、力うどんの具に近い。
https://w.atwiki.jp/sentai-kaijin/pages/3071.html
【名前】 魔化魍カッパ 【読み方】 まかもうかっぱ 【声】 塩野勝美(響鬼) 【登場作品】 仮面ライダー響鬼仮面ライダーディケイド 【登場話(響鬼)】 二十五之巻「走る紺碧」(秩父)四十二之巻「猛る妖魔」(東秩父)四十四之巻「秘める禁断」(館林)四十五之巻「散華する斬鬼」(さいたま) 【登場話(ディケイド)】 第18話「サボる響鬼」 【分類】 等身大魔化魍 【妖怪モチーフ】 河童 【生物モチーフ】 イグアナとスッポン 【登場地域】 埼玉県秩父地方埼玉県東秩父村群馬県館林市埼玉県さいたま市『響鬼の世界』『ディケイドの世界』 【詳細】 夏に出現する、カッパと呼ばれる等身大の魔化魍。 主に沼や池で成長するタイプで夏の魔化魍の中では出現率が高く、目撃例も多い。 素早い動きと、口から吐き出す空気に触れると硬化する粘液を武器とし、粘液が硬化すると重くなる性質を利用して動きを封じた後水中に突き落として溺れ死させる。 鬼の筋力を持ってしても硬化した粘液はキツいようなので、一般人なら抵抗もできないだろう。 餌は人の内臓で、肛門から吸い取ってしまうという(尻子玉を抜くという伝承の元か)。 また夏の魔化魍の特徴として自分で増殖することができ、成長して首周りに毛を蓄えるようになると頭部を分離して新しい個体を生み出す(分離した頭部は即座に再生する)。 これは全ての個体が持つ特徴でねずみ算式に個体数を増やして行くため、カッパが出現した場合早急に対処が必要となる。 すべての個体が親になりうるという極めて厄介な分裂方法で、倒される寸前であっても分離に成功すればすぐさま成体に成長してしまう。 この魔化魍が吐き出す粘液は凝固するとヘリウムガスに似た性質のガスを出すのが特徴で、それを吸い込んでしまうと声が変わってしまう。 古くは自然発生もしていた魔化魍で、個体によっては頭部にサラのような器官を持っていたり人間ではなく植物を主食にする個体もあったらしい。 しかし近年の自然破壊によって環境が変わり、自然発生する確率は低くなっていったとのこと。 今回出現した河童は童子らの情報が全くないため自然発生である可能性が高いものの、裁鬼に倒される童子と姫らしき姿が確認されている(後に仮面ライダー図鑑にて裁鬼が倒したのがカッパの童子らだったことが確定した)。 【仮面ライダー響鬼】 【秩父のカッパ】 秩父地方の沼に出現。秩父地方の土地で、気温26℃前後、湿度55%の環境によって成長した。 響鬼に登場したカッパとしては初登場となる。 退治に来た裁鬼を不意打ちで倒して逃走。 居場所に当たりを付けやってきた響鬼と交戦する。 その際2体出現し、全匹灼熱真紅の型を受けて爆散するも一体が寸前で子供を分離しており、それが瞬時に成長して逃走。 追いかけてきた響鬼紅に粘液を吐きかけダムに飛び込み、追いかけてきたものの満足に動けない響鬼を傷めつけたが空中に弾き飛ばされ身動きがとれないままに灼熱真紅の型を受け倒された。 【東秩父のカッパ】 東秩父地方に出現。 本来夏の期間にしか出現しないはずなのだがオロチ現象により大量に出現し、轟鬼と戦ったが東秩父のオトロシに轟鬼諸共踏み潰され倒された。 【館林のカッパ】 館林地方に出現。 本来夏の期間にしか出現しないはずなのだがオロチ現象により大量に出現し、人々を襲うが装甲響鬼の鬼神覚声を受けて多数の魔化魍もろとも倒された。 【さいたまのカッパ】 埼玉県さいたま市地方に出現。 本来夏の期間にしか出現しないはずなのだがオロチ現象により大量に出現し人々を襲った。 しかし、装甲響鬼の鬼神覚声を受けて多数の魔化魍もろとも倒された。 【仮面ライダーディケイド】 【響鬼の世界】 『響鬼の世界』にある森の中に出現。 とりあえずは人を襲う怪人……ではあるが、当初は士は意に介さず、夏海、ユウスケと魔化魍の話題になった際に驚かすネタに使われた(顔を合わせたカッパ、ユウスケ双方で動揺していた)。 しかし、その場でアスムが乱入。 完全な鬼になれない(頭部が人間のままの)彼を圧倒していたが、士がディケイドに変身して加勢。 目にも止まらぬ速さで動きまわり翻弄して逃亡を図るが、ディケイドカブトにカメンライドしたディケイドのアタックライド クロックアップに先回りされ、ファイナルアタックライド・カブト(ライダーキック)を発動される。 それに気付くも時すでに遅く、慣性の法則に体がいうことを効かず、キックを叩き込まれ倒された。 他作品では単なる高速移動として処理されるクロックアップだが、本来は時間から切り離された移動方であるため、それを視認できるこのカッパは地味にスゴイ。 【ディケイドの世界】 『ディケイドの世界』に出現。 多くの怪人たちとともにライダーたちと戦うが全滅している。 【余談】 デザインモチーフは妖怪としてのカッパのイメージにイグアナとスッポンを混ぜ込んだもの。 頭がスッポンのイメージだろうか。 妖怪としては数多く入る日本産としては有名所の一つ。 夏限定の魔化魍として設定されているが、カッパは川等の水場での目撃情報が多く、相撲好きや、頭に皿を持ちそこに水を蓄え陸上で活動するが頭を傾けさせて水をこぼさせると弱体化する、等地方にもよるが様々なエピソードが見られる。 魔化魍としては草食性だったり、頭に皿のような器官を持つ等個体差があると設定されている。 時として自然発生する魔化魍が環境の変化でその頻度が低下しているというが、自然界のメタモルフォーゼの力が環境破壊で低下していると考えると何ともやるせない気持ちになる。 空気と反応して硬化する粘液を吐き出すというのは、粘液を浴びた両腕が重くなり下に下げた様子を相撲の蹲踞に見立てたものだろうか。 そういった目撃例がこの魔化魍がカッパの伝承を残すにあたって混同されているのかもしれない。 もしくは童子達が相撲好きで、ヌリカベの童子らのように二人で協力して打倒した人間を餌にしたとか。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1554.html
「二人のハルヒ 第1部」 今の季節は、夏である。 夏休みまで、あと少しなので生徒達もハイテンションになるようにケージ溜めてる所だろう。 俺は、今、あり得ない事が起きてしまった。 疲れてるのは俺か?世界か? こういう時は、「あ、ありのまま起こった事話すぜ!」と使うんだろうな。 その理由は、今から30分前である…。 俺は、いつものように学校が終わり、部室へ向かった。 毎度ながら、部室の前でノックする。 これ社会人として重要なマナーだぜ! 「どーそ!」 やけに、声が高いと言う事はハルヒがいるって証拠だが…。 俺は、見てしまった…凄いの見てしまったのである。 入ると、団長席にハルヒがいる…訳だが。 何が雰囲気がおかしい。 取りあえず、声掛けてみる。 「どなたですか?」 と言った途端、その人は立って俺の所へ来やがった。 「あ、キョン!あんたはキョンなんだよね!」 いきなり、俺の事を呼び捨てされた。 よく見ると、20代ぐらいの綺麗な女性で、教師っぽい服装を着て、頭に黄色いカチューシャを付けてる。 どっかで会った事あったっけ? 「あのー…俺は、あなたと会うのは初めてなんですけど」 「ん?あー、ゴメンゴメン!」 本当に、テンション高い女性だな。 「私は、未来からやって来た涼宮ハルヒよ!」 …WHY?俺の頭がおかしくなったのか? えー、こういう時は…Who are you? 「だーから、「未来からやって来た涼宮ハルヒよ」って言ってるの!分かる?高校のキョン君!」 な、な、何だってー!つまり、この時代のハルヒは高校1年。 そして、今、俺の目の前にいるのは未来からやって来たハルヒである。 普通は朝比奈さん(大)が出てきてもおかしくないのに、何故か未来のハルヒがここにいるんだ? ここの時代のハルヒをハルヒ(小)で、目の前にいるハルヒはハルヒ(大)しておこう。 「えーっと、何でハルヒさんがここに?」 ハルヒ(大)をさん付けするのは変だが、仕方ない…相手は年上だからな。 「…実はね、みくるちゃんが風邪引いちゃっててさ、みくるちゃんの代わりにここへ来たの」 はぁ、朝比奈さん(大)が風邪って珍しいですねぇ。 「まぁーね、みくるちゃんとは古い友達だから断りにくいからね」 それはそれでいいとして、何故、朝比奈さん(大)は未来人だと知ったんですか? 「ん、時が来れば分かるけどね!古泉君の正体…有希の正体も分かるよ」 「そうですか…」 『時が来れば』って事は、いつかバレるんだな…。 「さてと、カチューシャを外してポニーテールするわ、あんたはポニーテール萌えなんでしょ?」 Yes、そうですよハルヒさん。 ハルヒ(大)は、カチューシャを外してポニーテールした。 今のハルヒ(小)よりハルヒ(大)の方が綺麗ですなぁ…。 と感心してる内に、ハルヒ(小)がやって来たのである。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ で、今至る…。 「やっほー!皆、いるー?」 相変わらず、声が高いハルヒ(小)である。 「あれ?キョン、この人…誰?」 ハルヒ(大)がいる事に気付いたハルヒ(小)。 どうやって、誤魔化すか…。 「えー…この人は…」 と言ってる内に、ハルヒ(大)が言った。 「始めまして、私はキョン君の従姉の鈴見ハルカって言うの!訳があって、ここへ来たの」 流石、嘘も上手いな…ハルヒ(大)よ。 「そうなの?…あたし、涼宮ハルヒ!ここの団長よ!よろしくね!」 いきなり、丁寧語無しか?ハルヒ(小)よ。 「ふふふ…」 ん?どうしたんですか、ハルカさん 「んー、ハルヒちゃんって可愛いわねぇ!いじめたくなるわぁ~」 と、ハルヒ(小)の胸にわしづかみした。 「わわわわ!何するのよ!」 「んー、ちょっと…私より小さいわねぇ…可愛いから、いじめたくなるわぁ!」 この性癖は変わってないな、ハルヒ(大)は。 「わぁ、ち、ちょ、ちょっと待っ…、コラ!キョン!見るな!」 わしづかみされるハルヒ(小)、わしづかみするハルヒ(大)。 変な光景ですな、フロイト先生。 とにかく、止めさせよう。 目のやり場が困るからな。 「ハルカさん、もうやめたらどうです?」 「ん、あ…ゴメンゴメン!私、可愛い子がいるとつい…」 ハルカさんは、ちょぴっと舌を出して、手で軽く自分の頭を叩いた。 それ、反則です!ハルカさん! 「あー、吃驚した…」 「ゴメンね、ハルヒちゃん」 「う、うん…許すわ」 しかし、何でしたのだろうか。 ハルヒの目を盗んで、聞いてみた。 「ハルヒさん…何でしたんです?」 と、俺は小声で言った。普通の声で言うとバレるからな。 「ん、何か…昔の私を見ると、何かムカついててさ…」 そうですか、ハルヒ(大)はもう大人になってる。 確かに、昔の自分がバカな事をして来たから、今思うとムカツクと言う気持ちは分かるな。 「とにかく、ハルヒを嫌がらせしないで下さいよ」 「分かってるわ、この時代の私は隠れた能力あるからでしょ?」 これは驚いた。ハルヒの能力も知る日が来るのか…。 この後、古泉、朝比奈さん、長門が来た。 皆が集まった所で、ハルヒが元気良く… 「さぁ、SOS団ミーディング開始よ!」 と言った。 内容は、明日は土曜日であり、不思議探しを行われる事になった。 「キョン!明日9時に集合よ!来なかったら、死刑よ!」 やれやれ…やっぱ俺の奢りだな、これは…。 「ハルヒちゃん、ちょといいかしら?」 と、ハルヒ(大)が言った。 「何?ハルカさん」 「明日…私も来ていいかしら?」 ハルカさん、何言ってるんですか。断るに決まってますよ。 「んー…そうね、来ていいわよ」 何ですと?俺の従姉なのに?(そう言う設定になってるけどな) 「いいじゃない、一人二人増やしても構わないわ」 と言いつけ、ミーディングが終わった。 帰り道、ハルヒ(大)と一緒に歩いている。 「どう言う事です?ハルヒさん」 「ん、何か?」 ハルヒ(大)は、懐かしそうに周りを眺めてる。 「何故…不思議探しに参加するのです?」 「懐かしいからよ…それに、やらなければならない事あるの」 「やらなければならない事って?」 「それは…やっぱ、みくるちゃんがよく言う「禁則事項」って事かな?」 「そうですか…」 「でも、この時代の古泉君や有希なら知ってると思うわ」 「分かりました…」 しかし、大人になったハルヒは綺麗だな。 ふと、気になった事あるので、聞いてみようか。 「二つ質問あります」 「何?」 「結婚してますか?」 「ん、結婚してるわよ」 「そうですか…もう一つは、あなたは何歳ですか?」 「あはっ、禁則事項よ」 ハルヒ(大)の指が俺の口に当て、ウインクした。 ぬぅっ、こりゃ9999ダメージで即死だな。 「じゃあ、私は有希のマンションで泊まるわ」 「あ、はい」 「本当は、あんたの家で泊めたがったけどね…」 泊めてもいいですよと言いたい所だが、親にどう説得してくれるか分からないからな。 「じゃ、まだね」 と言いつけ、解散した。 やれやれ…明日は、どうなるんだろうな…。 次の日 予想通りに、俺は遅刻してしまった。 「遅い!10分遅刻!奢り!」 朝から大声で言うな…ハルヒよ。 「やっほ、やっぱ…遅刻したのね」 ハルカさん、笑わないで下さいよ。 「ゴメンね、キョン君の代わりに私が奢ってあげるわ!いいでしょ?ハルヒちゃん」 ありがとうございます、ハルヒさん。 「ここはバカキョンが奢ってあげるべきよ!」 ハルヒ、お前は鬼だ!裁判に訴えるぞ! 「それでも、今回は私が奢ってやると言ってるから、いいじゃないの」 色々、話した結果…ハルヒ(大)が奢る結果となった。 後で、お礼言わないとな。 「さ、いーっぱい食ってなさい!」 「あのー…」 「何?キョン君」 「ここでいいんですか?ここ、金高いですよ?」 そう、ここは、金が高い高級レストランである。 「いいじゃないの、私は大人なんだから!金に余裕あるわよ」 「いいんですか、じゃ言葉を甘えていただきましょう」 おぃ、コラ!古泉、勝手に話を進めるな。 「ふぇ~、いいんですかぁ?」 「いいのよ、ハルカさんの奢りだからね」 遠慮って言葉知らんのか、ハルヒよ。 「ひひんひゃはいほ(いいじゃないの)」 食ってから言えよ、食ってから。 さて、長門は…。 「……(ヒョイ パクッ ヒョイ パクッ」 こいつも、遠慮って知らないのか…。 目から汗が出て来たような気分だ。 …俺も食べるか。 合計 12000円也 理由 ハルヒと長門、注文し過ぎ 流石、ハルヒ(大)も呆然したみたいだ。 「キョン君」 はい、なんですか? 「実はね…この時代にいる事にしたのよ」 WHY? 「昨日、みくるちゃんの上司から、そう言われたの」 マジですか? 「と言う訳でよろしくね」 はははは…ハルヒが二人…ハルヒが二人… 「キョン君!?ちょっと、しっかり!」 「どうしたの、ハルカさん…キ、キョン!どしたの!?真っ白になってるわ!」 ハルヒ、二人いるじゃねぇか… こりゃ、疲れが増やすだけだろ… 海…いや、朝比奈さんの上司のバカ野朗ーろーろー…(エコー) こうして、ハルヒ(小)とハルヒ(大)がいる生活が始まったのである。 第1部 完 第2部
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3914.html
■シーン1「虹がまいおりて」 暑くもなくさむくもない季節の、うららかな陽気の午後のひととき。ひなたぼっこをするにはうってつけの日よりです。 ですが、SOS団の団長である涼宮ハルヒは、ひまそうに部室でパソコンとにらめっこしています。 「なんてたいくつなの。せっかく授業が早くおわったっていうのに、なんにも楽しいことがないなんて」 ほおづえをついて、きげん悪そうにしていると、コトリと湯のみが置かれる音がしました。SOS団のマスコットである、みんなと一つ学年が上の朝比奈みくるが、いつものようにおいしいお茶をくんできてくれたのです。 「涼宮さん、そういう時はお茶でもゆっくりのんで、おちついてください。たまにはこういうのもいいと思いますよ」 「ありがと、みくるちゃん」 そう言われてハルヒは、ほどよくあついお茶をずずいと飲みながら、部室をぐるりと見わたしました。 お茶をもってきたみくるちゃんは、いつものふんわりとしたメイド服。動いているだけでも、部室の中があたたかくおだやかになります。 部屋のすみっこでは、同じ学年で、もともと文芸部員として部室にいたユッキーこと長門有希が、ゆったりともの静かに本を読んでいます。 パソコンのモニターのむこうでは、やはり同じ学年で、SOS団の副団長をつとめるキリリとりりしいイケメンの男子、古泉一樹くん。 そしてハルヒと同じクラスで前の席に座り、SOS団の雑用係をさせられているキョンが、公民館のえんがわで、のんびりしているおじいさんたちのように囲碁をしていました。 ハルヒの目の前では、まったり、ゆっくりとした時間が、春の小川のように、たゆたゆとながれているようでした。 けれども、ハルヒにはそれがたいくつでたいくつでしかたがありません。顔をむすりとしてしまうと、自分ひとりだけおいてきぼりにされた気分になりながら、さっきから何度更新しても、全く画面が新しくならないインターネットのニュース画面を見ていました。 (もう、たいくつでたいくつで、今にも干からびてしまいそうだわ!) その時、ぐうぜん目にとまったのは、ニュースの記事にのっていた、大きくてきれいな虹の写真でした。 それを見ていると、むかし絵本で読んだ、虹の下に、宝ものがうまっているというおとぎ話を思いだしました。 「こんなおっきな虹の橋が、どかーんと、今すぐここにあらわれたりしないかしら」 今日は雲も少ないおだやかな日より。雨なんてどこにもふっていないのに、大きな虹が出てくるはずがありません。 いつもなら、そんなことがあるはずがないと、どこかうたがいながら思ってしまうことです。 でも今日のハルヒは、たいくつすぎて、強く、強く、本当におこったらいいなと思ってしまいました。 その時でした。 「ひゃぁ!」 みくるちゃんのかわいらしい、小鳥のような悲鳴が部室にひびきます。 「どうしたの、みくるちゃん?」 「す、涼宮さん。う、うしろ……」 「ハ、ハルヒ、まて!まつんだ!」 キョンがよびとめましたが、ハルヒはすでに後ろをふりむいたあとでした。 「な、なによこれ?!」 それを見てしまったとき、ハルヒの目は、ぎっしりつまった宝石ばこの中身のようにキラキラとかがやきました。 後ろの窓にあらわれていたのは、部室と同じくらいはばのある虹でした。それも、さわれそうなくらいハッキリしたものです。 ハルヒは急いで窓をあけて、身をのりだそうとしました。ですが、だれかがハルヒの体をはがいじめにしてしまいました。 「ちょっとエロキョン!なにしてんのよ!どこさわってんのよ!」 ハルヒは力まかせにあばれます。ですが、キョンはしっかりと組みついて、手をはなそうとしません。 「やめろハルヒ。とびおりる気か?!あぶないだろうが!」 「なに言っているのよバカキョン!ここにしっかりと虹があるのが見えないの?!」 キョンは必死に見えないと言いはっていましたが、ハルヒの目の前にははっきりと虹が見えていました。それにみくるちゃんにも見えているようです。古泉くんとユッキーはだまったままでした。 ハルヒはキョンのうでをふりほどくと、窓から身をのりだして虹に手をふれました。 「すごい、すごいわ!この虹、ほんとうにさわれるのよ!」 ハルヒはみくるちゃんの手をつかんで虹にさわらせます。びくびくとおびえたようすのみくるでしたが、ほんとうにさわれるとわかると、ぱあっとバラのつぼみがほころぶような笑顔を見せたのです。 「ほ、ほんとうにさわれちゃいましたぁ」 みくるの次は古泉くんとユッキーです。二人の手をつかむと、ハルヒは強引にふれさせます。二人とも、その虹がさわれることをみとめると、ハルヒは勝ちほこった顔でキョンを見下ろしました。キョンは顔をおさえたいつものようすで首をふっています。 「キョン、アンタもこれにさわって、この圧倒的な現実をみとめなさい!」 ハルヒは強引にキョンをひっぱりあげると、むりやり虹をさわらせます。 「わかった。もうわかった!」 とうとう、キョンもその現実をみとめてしまったようです。 さっきまでのふきげんを、とおいとおい宇宙のむこうになげすてたハルヒは、つくえの上に立ち上がって、声高らかに言いました。 「この虹の橋のむこうには、きっと見たこともない世界が広がっているのよ。そしてこのSOS団は、そんな世の中のふしぎを、ときあかすために設立された団体なのよ」 「で、どうするんだ?」 もう、どうにでもなれと言いたそうに、キョンはつぶやきます。 「当たり前のことを言わせないで!これからさっそく出発するに決まっているじゃない!」 こうなったハルヒには、世界中、いえ、宇宙中のだれもさからえません。 みくるちゃんは、ハムスターのようにおどおどしながら。 古泉くんはいつものあいそ笑いをうかべて。 ユッキーはいつものポーカーフェイスをくずさずに。 そしてキョンは、やれやれとあきらめた顔をして、虹の橋を先頭に立ってつきすすむハルヒのあとを追っていったのです。 「どうします?これはゆゆしき事態ですよ」 すこし顔をくもらせながら、古泉くんはキョンに耳うちします。 「どうするもこうするもねえよ。こうなったら、やらせるだけやらせて、てきとうなところで言いくるめるしかないだろう」 ほかにどうすることもできないと、キョンはあきらめてしまったようでした。 「さあ行くわよ!これからわたしたちの、大ぼうけんがはじまるのよ!」 ■シーン2「ハルヒの大ぼうけん」 おもいえがいた大きな虹の橋が、本当に現れてしまう。その事をきっかけに、ハルヒは気がついてしまいました。ハルヒが心の底から、なんのうたがいももたずに願ったことは、本当に現実になってしまうことに。 ながれ星が雨のようにふってほしいと願えば、本当に空いっぱいに星がふりそそぎました。 魔法の使える世界に行きたいと願えば、たちまち魔法の世界に行けましたし、SF映画のように宇宙をとびまわるのも思いのまま。 小人のように小さくなったり、怪獣のように大きくなってみたり。 今まで読んできた物語の世界や、自分が思い描いた世界だけではありません。 自分では考えつきもしない、ふしぎな世界を冒険したりもしました。 ハルヒはSOS団のみんなと、時がすぎていくのもわすれて、夢のように楽しい世界を、思うぞんぶん遊びまわったのでした。 「さあ行くわよ。今度のあいては見た目はどうしようもなく弱そうだけど、ずるがしこくて見た目よりずっと強い、異次元大魔王よ!」 まっ白い全身タイツを着たような体に、幼児のらくがきのような顔をした、手ぬきにしか見えないような姿の異次元大魔王が今度の敵です。 見た目とちがって、大魔王は宇宙全部をふるえあがらせるほど強く、その強さの前に、たくさんの勇者たちがたおされてしまっていました。 でもハルヒのSOS団は宇宙最強です。 なんといっても今のハルヒは、ウルトラでスーパーにグレイトな“超”勇者さまです。 みくるちゃんはハルヒが作った映画と同じ、戦うウエイトレスに。 古泉くんもエスパー戦士イツキになり、ユッキーも宇宙人で大魔法使いになっていました。 ただ一人、キョンだけは一般市民の代表としていつもと同じでしたが、とにかくSOS団はぜったいに無敵なのです。負けるはずがありません。 SOS団は、大魔王のずるがしこくて、あくどいワナに苦しめられながらも、あらゆる困なんを、 みんなの知恵と勇気でのりこえて、とうとう大魔王の場所までたどりつきました。 大魔王の強さはウワサ以上で、今まで出会ったことがないような、ものすごい敵でした。 みんなはボロボロになって、今にも負けてしまいそうなくらい追いつめられてしまいました。 「みんなあきらめないで、みんなの力をわたしに全部ちょうだい!それがあのへちゃむくれのちんちくりんを、こてんぱんにやっつける最後の方法よ!」 「わ、わかりましたぁ……」 「私たちの最後の力を、涼宮さんにあずけます」 「……、うけとって」 なんの力ももたない一般市民代表のキョン以外の三人の力が、超勇者ハルヒにあつまります。そして、最後の力をふりしぼってハルヒにあずけた三人は、力なくその場にくずれ落ちてしまいました。 「みんなの力、みんなの想い、たしかに受けとったわ!異次元大魔王、これでもくらいなさい!」 ハルヒはみんなの力を剣の先にあつめて、異次元大魔王につき立てます。 ですが、魔王は固いバリアをはってしまい、剣がなかなかささりません。 「こんのぉ!」 その時です。 ハルヒだけではどんなに力をこめてもやぶれない、固いバリアにヒビが入りました。 だれかがハルヒの背中を後押ししてくれたのです。 「いくぞ、ハルヒ。これで終わらせるぞ」 「うん!」 全宇宙で最強の超勇者ハルヒと、一般市民の代表のキョンが力をあわせれば、たおせない相手はいません。 二人でにぎった剣はバリアをつらぬき、大魔王にせまります。 大魔王は必死にヤリをとばして反撃しますが、二人の勢いをとめることはできません。 グサリ! 「ぐえぇぇ!」 異次元大魔王は、悲鳴をあげてたおれ、ぶくぶくとあわのように消えていきました。 この宇宙に、ついに本当の平和がよみがえったのです。 ■シーン3「大ぼうけんとひきかえに」 「やったわ、キョン!やったわ、みんな!」 うっすらと笑顔をうかべたキョンの顔をみて、ハルヒがうなずいたとき、おどろおどろしい大魔王の部屋は消え去りました。 そして気がつくと、そこはまっ赤な夕陽にてらされた、どこかものさびしい丘の上に変わっていました。 「やれやれ、やっと終わったな」 キョンはその場にすわりこんで、そばにあった大きな岩にもたれかかります。 顔をむすりとふくらませて、ハルヒはキョンにつめたく言い放ちます。 「ちょっとキョン。このくらいでへばってどうすんのよ!?まだまだこれからよ。これからが本気の本番なのよ!」 「そうか。そうだったな。そいつはすまなかった」 ふうと、大きなため息をついてへたりこむキョンにがっかりしたハルヒは、近くにいるはずの三人を探す事にしました。 ハルヒは大魔王をやっつけて手に入れた、七色にかがやく大きなくん章をもっていました。 いつも無口なユッキーはとにかく、みくるちゃんも古泉くんも、きっといっしょによろこんでくれるはず。 足どりも軽く、ハルヒはパタパタと元気よく走り回りながら、三人をさがしました。 「みくるちゃーん!ユッキー!古泉くーん!どこー?!」 やがてハルヒは、丘の中ほどでなかよさそうに寝そべっている二人の姿を見つけました。みくるちゃんと古泉くんです。 「ちょっとちょっと!二人とも、いつのまにそんなになかよくなっていたの?!」 二人をひやかそうと、かけよってきたハルヒでしたが、ようすがおかしい事に気がつきました。 二人とも、返事どころかピクリとも動こうとしないのです。 ハルヒは寝そべっている二人のようすをよく見て、手にしていたくん章を落としてしまいました。 「みくるちゃん?古泉くん?」 あわててかけよったハルヒは、みくるちゃんの体をゆすりました。 でも、何の反応もありません。 同じように古泉くんの体もゆすってみましたが、みくるちゃんと同じように、身動き一つしないのです。 「ちょっと二人とも、冗談でしょう?!」 ハルヒはあわててみくるちゃんのうでをつかみ、脈をとりました。 でも、なにも感じられません。 今度は胸に耳をおしつけてみました。 マシュマロのようにやわらかい胸からは、服ごしからでもまだ、あたたかい温もりは感じられるのですが、心臓が動いている音がしないのです。 そしてそれは、古泉くんも同じでした。 そうです。異次元大魔王をやっつけるためにハルヒにわたした力は、本当に残っていた力の全てだったのです。 そして力を出しつくしたその直後に、みくるちゃんも古泉くんも、こと切れてしまっていたのです。 「いやぁぁ!」 ハルヒの悲鳴が、あたりにひびきました。 ハルヒは必死になって、二人に心臓マッサージをほどこします。 けれども二人は息をふきかえすどころか、体がどんどんつめたくなっていくばかりです。 その時です。ハルヒの前に人影がさしました。 思わずハルヒが見上げると、そこに立っていたのはユッキーでした。 「ユッキー、よかった。無事だったのね!わたしといっしょに、みくるちゃんと古泉くんに、心臓マッサージをするのよ!」 けれども、静かにユッキーは首を横にふりました。 「もう手おくれ。この二人にも、私にも、残されている時間はない」 「ユ、ユッキー?何を言っているの?」 ぼうぜんとおどろいているハルヒに、ユッキーは静かに続けます。 「でも、今ならまだ間に合う。だから、あの人のところに行ってあげて、涼宮ハルヒ」 それを言いおわると、ユッキーはハルヒに人さし指をむけて、何か信号のようなものを頭の中に送ってきました。 そしてその直後、ユッキーは光のこなつぶになって、ゆっくりとふきながされるように消えてしまったのです。 「ユッキー?ユッキー?!ユッキー!」 ハルヒはぶんぶんと手をふり回して消えていくユッキーをつかまえようとしました。 けれども、ユッキーは影さえのこさずに消えてしまったのでした。 たてつづけにおこる、わけのわからないできないできごとで、ハルヒの頭の中は、ぐつぐつとにえたぎるスープのようになってしまいました。 けれども、ユッキーが最後に伝えた言葉は、ぐさりと胸につきささっています。 その時、ハルヒははっとしました。ユッキーが伝えたかった言葉の意味がわかってしまったのです。 ハルヒは必死になって来た道をかけ上がっていきました。 「キョン!ちょっと返事しなさい!キョン!」 ぜいぜいと息をつきながら丘の上にあがると、先ほどと同じような様子で、キョンは岩にもたれかかっていました。 「バカキョン!ちゃんと返事しなさいって言っているでしょう!」 その時、ハルヒはキョンのまわりに、不自然な水たまりができている事に気がつきました。 ついさっきまで、そんなものはどこにもありませんでしたし、雨がふったあともないのに。 「キョン?!キョン!」 水たまりを無視してあわてて駆けよると、パシャパシャと足元ではねたしぶきが体にかかります。 するとハルヒの着ていたまっ白な超勇者のバトルドレスに、まっ赤なはん点もようがえがかれてしまいした。 しずんでいく、まっ赤な夕陽にてらされて、水が赤い色になったのではありません。 それはまちがいなく、キョンの体からながれ出た血でした。 キズ口は右足のふとももの辺りから。 ハルヒをかばって異次元大魔王の攻撃をうけたとき、右の太ももの太い血管をヤリでつらぬかれていたのです。 「バカキョン!何やっているのよ!」 ハルヒはスカートのすそをやぶり取ると、キョンのキズ口をしばります。 けれども、ながれ出てしまった血はあまりにも多く、すでにキョンの体の温もりはほとんど失われてしまっていました。 キョンはハルヒがもどってきた事がようやくわかったようでしたが、そのひとみはぼんやりしてさまよっており、もう何物も見ていないようでした。 キズ口をきつくしばりあげ、必死にキョンの体をゆするハルヒ。 目から涙がぼろぼろとながれ落ち、体もガタガタとふるえています。 そんなハルヒに、キョンは苦しそうにのどを動かしながら、かろうじて一言を、しぼりだすようにつぶやきました。 「ハルヒ……、すまねぇ」 必死にキョンをおこそうとよびかけるハルヒでしたが、それはまったくむだでした。 泣きじゃくるハルヒの目の前で、キョンのまぶたはゆっくりととじられてしまい、か細くあえいでいたのどは、とうとうその動きをとめてしまいました。 一般市民の代表で、SOS団の雑用係のキョンは、その大切なつとめを終えて、ハルヒのうでの中で息を引きとったのです。 「いやあぁぁ―――!」 ハルヒの痛々しいさけび声が、血のようにまっ赤な夕陽にてらされた、だれもいない丘の上にすいこまれていきました。 ハルヒは、SOS団のみんなの死を受け入れることができませんでした。 これはなにかのまちがいだと、かたく信じ、みんなを元にもどそうとしました。 何といっても、ハルヒの力は無限です。かなわない願いなんてあるはずがありません。 いままで何度も、バッドエンドをむかえてしまった物語をハッピーエンドに書きかえてきたように、ハルヒはその力をおしみなく使います。 まばゆく、あたたかい光が世界中にあふれ、さびしい丘はここちよい春のにおいがたちこめる、花いっぱいの場所に変わりました。 キズだらけになって、ボロボロだったみんなも、よごれ一つないきれいな服と、どこにもケガのあとがない、健康な体にもどりました。 「さあ、みんなおきて。また、ぼうけんの続きをしましょう!」 でも、だれも返事をしてくれません。 たしかに、目の前に寝ころんでいるみくるちゃんも、ユッキーも、古泉くんも、そしてキョンも、みんな体は元どおりになっています。 でも、どんなにゆすってみても、耳元でさけんでみても、頭から水をかけてみても、だれも目をさますことはありませんでした。 「みんなひどい!そうやって活動をストライキしようなんて虫がよすぎるわよ!」 怒ったハルヒは、ずぶぬれになって寝ころがっていた、キョンのほおをいきおいよくはたきます。 けれども、それでもキョンは目をさまそうとしません。 ハルヒはおそるおそる、キョンの胸に耳を当ててみました。 そして、キョンの胸から何の音も聞こえてこないことに気がつくと、大きな悲鳴をあげて、もう一度世界を光につつんでしまいました。 ■シーン4「ひとりぼっちにしないで」 それからハルヒは、何度も何度もみんなをめざめさせようとしました。 みんなが好きそうな世界を用意したりもしましたし、見ただけでとろけてしまいそうなくらいおいしそうな料理を、うでによりをかけて用意したりもしました。 ほかにも時間をまきもどしてみたりもしましたし、とにかく思いつく全てのことをためして、ハルヒはみんなを起こそうとがんばりました。 でも、どんなことをしても、どれだけハルヒががんばってみても、みんなが目をさますことはありませんでした。 それでもハルヒはあきらめずに、みんなを起こそうとがんばりつづけたのでした。 ハルヒはほおにつめたい光を感じて、まぶたをあけました。まわりは墨でぬりつぶしたようにまっ暗です。 小高い丘の上、ひゅうひゅうとおだやかな風の音がきこえてきます。 ここがどこであるか、一瞬、ハルヒにもわかりませんでした。 SOS団のみんなといっしょに学校をとびだして、数えきれないくらいドキドキするような大冒険や、夢のように楽しい時間をすごして、最後に悪者をみんなでやっつけて……。 それが終わったあと、どのくらい時間がたったのでしょう。 気がつくとハルヒはここにいました。 まわりには草木もなく、ぽつり、ぽつりとくちてしまった建物のあとがのこっているだけの、つめたい月の光にてらされた、さびしい丘の上です。 ハルヒは歯をくいしばり、おきあがると、かたわらの少年をだきおこしました。 キョンのなきがらです。 何度も、何度も、もう数えきれないくらいハルヒは、みんなをおこそうとがんばりました。 でも、どれだけみんなの体を健康にしてあげても、それはたましいの入っていないぬけがらのままでした。 そして、ぬけがらは、あっという間に、なきがらになってしまいます。 どんなにがんばっても、みんなはなきがらのまま、目をさまそうとはしません。 それでもハルヒは、SOS団のみんなの、一番大好きなキョンの死を、受けとめられずにいました。 キョンはまだ生きていて、いじわるく眠っているだけだと、そう信じているのです。心から。 「こんなにさむいんだから、おきなさいよキョン。こんなところで、いつまで寝ているつもりなのよ。本当にカゼひいちゃうわよ」 返事をしないキョンに話しかけ、たちあがろうとしてよろけて、たおれてしまいました。 一瞬、気を失ってしまいましたが、何とか目をあけます。 空を見あげると、ふりそそぐような満天の星がかがやき、月がきれいにまるく見えました。 ハルヒがみんなでいっしょに見上げるために、星をいっぱいあつめて作った、だれもみたこともないくらいロマンチックな星空です。 ハルヒは寝ころんだまま、キョンにだきよりました。 「キョン見て。とっても星がきれいよ」 ハルヒが話しかけても、キョンはまぶたをとじたままです。 キョンのつめたくかたい体をだきしめながら、ハルヒはふるえていました。歯の根があわず、がちがちと鳴ります。 しかし、しばらくそうしていても、いっこうにキョンの体にぬくもりはもどってきません。 ハルヒのほおに涙が伝い落ちました。 「返事をしてよ。キョン!」 ハルヒは大声でさけびました。 こらえきれなくなったハルヒは、思わずキョンの体にのりかかって、首に両手をかけてしまいます。 けれども、手で直にふれたキョンの体からは、呼吸も、脈も感じられません。 それどころかキョンの体は、ハルヒの手の方がこってしまいそうになるくらい、つめたく、かたくなっていました。 「キョン!みくるちゃんも古泉くんもユッキーも死んじゃったのに、どうして、わたしをひとりぼっちにするのよ!目をあけて―――!」 ハルヒは泣さけびました。 「みくるちゃん、古泉くん、ユッキー!キョンをめざめさせて。わたしを助けて。ひとりぼっちにしないで」 声をしぼりだし、夜空にむかってさけびつづけました。しかし、もちろん返事はありません。 「みくるちゃん、古泉くん……」 ハルヒはあらためてみくるちゃんと古泉くんの最後のすがたを思いだしてつぶやきました。もう、涙もかれはてました。 「ユッキー……」 光のつぶになって消えてしまったユッキーのことを思いだすたび、ふかい穴をのぞくような気持ちにおそわれます。 そのときでした。ユッキーが消えていく前にもらった最後の信号が、はっきりと頭の中に光景になって見えてきたのです。 ハルヒが見た光景。それは、自分以外の四人が話しあっているところでした。そしてそれは、ハルヒにとって、とても信じられないものでした。 「もう、だめです。ぼくはこれ以上たえられない……」 泣きくずれ、うずくまってふるえていたのは、いつもクールな表情を変えない古泉くんでした。 みくるちゃんは、いっしょに半べそになって、背中からだき支えながら、けんめいに小泉くんをはげましています。 「これ以上の……、ニンムのケイゾクハ、困難と判断する……。このインターフェイスはともかく、ワタシの能力はもう、ゲンカイ」 ユッキーはもっと信じられないことになっていました。 声はこわれたラジオのスピーカーのように割れてしまい、体のあちこちから、パチパチと放電の火花をちらせながら、映りの悪いアナログテレビのように、体が何まいにもわかれてブレてしまっていたのです。 「みんな、まだだ!まだこらえてくれ!」 そんな三人に、必死によびかけていたのはキョンでした。 「たしかに、オレたちは体は大丈夫でも、心はもう限界だ」 そうです。ハルヒは楽しかったことの、特に楽しかったことだけをおぼえていましたが、細かいことは、きれいにさっぱりわすれていしまっていました。 でも、ほかのみんなはちがっていたのです。 みんなはハルヒから、そこなしの元気を受けとって、つかれ知らずの体になっていました。 だからハルヒに、気がとおくなるような、とてつもなくながい時間をつれまわされても、なんとかついていくことができたのです。 でも、体は大丈夫でも、心はちがっていました。みんなはそのながい時間の記憶をもったまま、ハルヒの遊びについていっていたのです。 そのつらさは人間はもとより、宇宙人のインターフェイスとしてつくられていた、ユッキーの限界さえこえるものだったのです。 そのつらさにとうとうたえられなくなって、みくるちゃんは泣き出し、古泉くんも、ユッキーも、とうとうこわれてしまったのです。 ですが、それでもキョンだけはがんばっていました。 「これだけハルヒが好きかってに世界をいじくってしまったんだ。ハルヒにオレたちがつらい顔を見せて、きげんを悪くしてしまったら、本当にとりかえしがつかないことになっちまう」 そのキョンの言葉を、だまって三人は聞いていました。 「だから、本当にハルヒがあきてしまうまで、オレたちはいっしょに笑顔で遊んでやらなきゃならないんだ」 それを聞くと、みくるちゃんは、もっとポロポロと涙をこぼしてしまいました。 「それに……、もしかしたらハルヒは、これからずっと永遠に、こんな力を持ったまま生きていかなきゃならないのかもしれない。何となく、そんな気がするんだ」 「たしかに、その可能性は高いと思います」 ようやく、古泉くんも顔をあげました。 「長門はどう思う?朝比奈さんも、どう思いますか?」 ユッキーは返答できないと無言のままでした。みくるちゃんはおずおずとうなずきます。 「だったらオレたちは、あいつを一人ぼっちにさせないようにできるだけいっしょに遊んでやらなきゃならない。あいつをひとりぼっちにしてしまったらどんなことになるのか、考えたくもない」 その言葉を聞いて、三人はキョンのところに集まりました。 「了解した」 「やりましょう。われわれ、SOS団の全員の力がかれはてるまで」 「みんなでいっしょに涼宮さんと遊びましょう!」 「よし、いくぞ!」 ハルヒがしらないところでおこっていた光景が目に、ハルヒが知らなかった、みんなの言葉が耳に焼きつきました。 みんな、むりにむりを重ねて、自分といっしょに遊んでくれていたのです。 そして体ではなく、心の、たましいの力を全て使いはたしてしまったせいで、みくるちゃんも、古泉くんも、ユッキーも、そしてキョンも、二度と目をさますことはないのだと、ハルヒはわかってしまったのでした。 「すまねえ、ハルヒ」 キョンが最後に口にした言葉が、胸のおくからわきあがり、ハルヒは胸をえぐりとられるような痛みにおそわれました。 どんな時でも、どんな場所でも、それが夢の中であったとしても、一度も自分を見すてなかったキョンが、そんな言葉を口にしてしまった事の重さ。 とても受けとめられるものではありません。 「いやぁ―――!」 ハルヒは髪の毛をぐしゃぐしゃにかきみだして泣きさけびながら、みんなにあやまりはじめました。 「みくるちゃん、もうお人形がわりにして遊んだりしません。古泉くん、お金をいっぱい使わせるようなおねがいごとばかりしてごめんなさい」 「ユッキー、文芸部の部室をかってに乗っ取ってしまってごめんなさい。お母さん、お父さん、ほかのみんなにも、ひどいことをいっぱいしてごめんなさい」 もう、いなくなってしまった三人に、今までめいわくをかけてきた人たちに、ハルヒは泣きながらあやまり続けました。 「ごめんね、キョン。今までむちゃくちゃなことや、めんどくさいことを全部おしつけて、いつもこまらせて……。ゆるしてなんて言いません。でも、おねがいだから目をさまして。わたしをひとりにしないで!」 どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。 何がいけなかったのでしょうか。 なんでも自分の思うとおりになればいいと、願ってしまったのがいけなかったのでしょうか。 やがて、ながす涙も、さけぶ力もなくなったハルヒは、キョンのつめたくかたい体にすがりつきました。 キョンの体に、自分の体温が全てすい取られていくようでしたが、それでキョンがおきてくれるのならそれでもかまいません。 もしだめなら、このまま自分も凍えて死んでしまってもいいんだと、ハルヒはそのまま、ふかい、ふかい、ねむりの底にしずんでいきました。 ■シーン5「そして、いつものあの場所に」 「……なさい、ごめんなさい。ごめんなさい」 おえつをもらしてうつぶせに机にふせていると、背中のむこうから、小さくとおく、チャイムの音がきこえてきました。思わずハルヒは顔をあげます。 「ふえ?」 ビクリとしておきあがると、ハルヒの目に、電源が落ちてまっ黒になっていた、パソコンの画面が目にとびこみます。 あと少しでしずみきってしまう夕陽にてらされて、まっ黒な画面には、ハルヒの顔がうつっていました。 見れば顔は涙でぐしゃぐしゃ。まくらにしていたうでも、ぐしょぐしょにぬれていました。 「ゆ、夢だったの?!」 ハンカチをとりだして顔をふこうとしたとき、肩にかけられていた男ものの上着が、すとんとすべり落ちました。 だれかがそのままではカゼをひいてしまうだろうと心配して、かけてくれていたのです。 そのだれかは、すぐわかりました。キョンです。 いつものようにうつぶせではなく、パイプいすに、うとうとともたれかかりながら、キョンは気持ちよさそうにねていました。 もちろんいつものシャツに、ゆるくといたネクタイの姿で。上着がだれのものであるのか、ほかに考える必要はありませんでした。 部室を見わたしましたが、ほかにだれかがのこっている様子もありません。 みくるちゃんも、古泉くんも、ユッキーも、みんなほかに用事があって帰ってしまったのでしょう。 そしてキョンは、ハルヒを起こすのもかわいそうだし、一人にしておくのもあんまりだからと、のこって、起きるのをまってくれていたのにちがいありません。 「キョン……」 さっきまで見ていた夢のことが、ありありと目にうかんできます。いえ、もしかしたら、今もまだあの夢の中なのかもしれません。 キョンのおだやかな寝顔を見ていると、ハルヒの心に太陽が、いえ、銀河がうまれたみたいな気持ちがわきあがってきました。このまま思い切りだきしめてしまいたい気持ちで心も体もいっぱいです。 でも、そのときでした。 「……、かわいいぞ」 そのキョンの寝言をきいたとき、ハルヒはカチンと固まってしまいました。キョンの口から、今まできいたことのない女の人の名前がとびだしてきたからです。 じつは、その名前はキョンの妹ちゃんの名前で、キョンは妹ちゃんが七五三のときのことを思い出していただけだったのですが、ハルヒにはそんなことはわかりません。 ハルヒの心に、めらめらと怒りのほのおが、もえあがってきました。 せっかくまっていてくれたのなら、きもちよさそうに寝ているのを、じゃましないでまっている気づかいをしてくれるのなら、どうして自分が悪夢でうなされていたのに、おこしてくれなかったのだろうと。 こうなると、愛しさあまって憎さ百万、いえ一億倍です。 ハルヒはかけてもらっていた上着を、きれいにたたんで机の上におくと、あどけない寝顔をしているキョンの後ろに立ちました。 そして油断どころか無防備そのものの、キョンの背後から、するどいチョークスリーパーを、万力のような力で首すじにガッチリ決めたのです。 「オトメの痛み、思い知れ!」 悲鳴にならない悲鳴をあげて、キョンはくずれ落ちてしまいました。 ハルヒは、ぐしぐしとそでで目元をぬぐうと、泣きはらした顔を見られないよう足早に、部室からたちさってしまいました。 かわいそうなのはキョンです。 自分一人で勝手にふてねしてしまったからといって、このままカゼをひいたらかわいそうだと、 せっかく上着までかけてあげて、おきるまでまってあげていたのに、この仕打ちです。 むりやり夢の世界からひきずりおろされ、げほげほとむせこんで、息もたえだえになってしまったキョン。 苦しさのあまり、部室のゆかの上で、いも虫のように転がり続けていました。 「まったく、下っぱなんだから、おきて、まっておかないキョンが悪いのよ!」 うつむいたまま玄関まで走りぬけ、靴をはきかえながらハルヒはつぶやいていました。 そして校門をはしりさりながら、キョンの首すじに、技を決めた感かくを思い出していました。 それはやわらかくてあたたかく、脈も息もあって、ここちよいにおいのする生きている人の体でした。 「そうよ。やっぱり、あんなのは夢に決まっているわ!」 でも、夢の中のはずの、みんなの体がつめたくてかたかった感じを、はっきりと体はおぼえていました。 「ただいま!」 いつもの言葉づかいで、家のドアを乱ぼうにあけると、ハルヒはお母さんを無視して自分の部屋にまっすぐむかい、制服もきがえずに、ベッドに顔をうずめてしまいました。 (あんなところで寝ちゃったから、あんなひどい夢をみちゃったのよ!ちゃんとしたところで、ちゃんと寝れば、ちゃんといい夢を見られるんだから!) こうしてハルヒは、自分の家に帰っても、学校でのつかれから、そのまま寝てしまいました。やっぱりあれは悪夢だと決めつけて。 でも、あれは本当に、ただの夢だったのでしょうか? 「がはっ!ごほっ!っつ、ハルヒのやつ……、なんてなんてことしやがる」 ようやく息をととのえたキョンは、ようやく現実の世界に帰ってきました。すると、キョンの携帯電話に古泉くんから連絡が入ってきました。 「古泉、てめえ、よくもオレだけおきざりにしやがったな」 どうやら古泉くんたちは、キョンにだまったまま、三人で部室からはなれたようでした。近くのファミリーレストランからかけてきたようです。 「どうした?また閉鎖空間が発生したって言うんじゃないだろうな?それともほかになにかおきたのか?!」 「いえいえ。涼宮さんと、どう進展されたのか気になったので」 「進展もなにも、こっちは寝てただけだったのに、あやうくしめ殺されるところだったんだぞ!」 キョンはかんかんに怒っていましたが、古泉くんはゆるやかにそれをうけながします。 どうやら三人によると、この日は閉鎖空間の発生が少しあったものの、時間をまきもどしたあとも、情報操作がおきたようすもなかったようです。 もう、これ以上のこっていても仕方がないと、キョンは部室の戸じまりをして帰る事にしました。 まどのカギとパソコンの電源が落ちているのかをチェックして……。 「ん?なんだこりゃ」 キョンはハルヒのすわっていた足元に、なにかが落ちているのに気がつきました。 それは、ずいぶんと古ぼけた、大きな金ぞくの円ばんでした。よくみると、おもちゃのくん章のようにも見えますが、キョンにはそれがなんだかわかりません。 「またハルヒのやつ、へんなものもってきてたんだな」 ハルヒがもってきたものでしょうから、それがなんなのかキョンにはわかりません。 しかし、正体がわからない以上、すてるわけにもいきません。ですので小物入れの中に、そのくん章をかたづけてしまいました。 「まあ、こいつがなんなのか、明日にでもきいてみるか」 ですがキョンは、ハルヒにかけられたチョークスリーパーのことで頭がいっぱいになっていて、そのくん章のことは、きれいさっぱりとわすれてしまったのでした。 ☆おわり☆
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2658.html
古泉が病室を出て行き、部屋の中には俺とハルヒの二人っきりとなった。 ……何だ、この沈黙は? なぜだか全くわからないが微妙な空気が流れる。 おそらくまだ1、2分程度しか経っていないだろうが、10分くらい経った気がする。 やばいぜ、ちょっと緊張してきた。何か喋らないと。 『涼宮ハルヒの交流』 ―最終章― 沈黙を破るため、とりあえずの言葉を口にする。 「すまなかったな。迷惑かけて」 「別にいいわ。けどいきなりだったから心配したわよ。……もちろん団長としてよ」 「なんでもいいさ。ありがとよ」 再び二人とも言葉に詰まる。 「……あんた、ホントにだいじょうぶなの?」 「どういう意味だ?」 「だってこないだ倒れてからまだ半年も経ってないのよ。何が原因なのかは知らないけどちょっと異常よ。 ひょっとして、あたしが無茶させすぎちゃったりしてるからなの?」 確かに、普通はそんなにしょっちゅう意識不明にはならないよな。 けど今回の原因はハルヒだなんて言えねぇし。 どうでもいいが無茶させてる自覚があるならもっと優しく扱ってくれ。 「だいじょうぶさ。もうピンピンしてる。別に体に問題があるわけでもない」 「そう……、ならいいけど」 ハルヒに元気がないな。そんなに心配してくれてたってのか? それともここも実は異世界で、これは違うハルヒだったりするのか?いやいや、そんな馬鹿な。 ……ん?そうだな、そういえば言わなきゃいけないことがあったな。 「ハルヒ、昨日はすまなかったな」 ハルヒは不思議そうな顔で目を向ける。 「だから、別にいいって言ったでしょ」 「……ああ、いや、そのことじゃない。昨日の昼のことだ」 「ああ、……あれね」 途端に不機嫌な顔になる。やっぱかなり怒ってんのか。 「つい、つまらないことでムキになっちまったな。すまん。 けどな、お前からはつまらないことかもしれないけど、俺にとっては結構大事なことだったんだ」 「………」 あのハルヒと同じように黙ったままだ。 「別にSOS団として不思議を探すのは構わん。宇宙人、未来人、超能力者を探すのも構わん。 お前が手伝って欲しいってんならできる限りのことはやってやりたい。できる限りはな。 けど、な。……そいつらを見つけたら、俺は用済みになるのか?」 「そんなことは言ってないでしょ!」 「言ってはないかもしれんが、ひょっとしたらそうなんじゃないかって思ってしまったんだ。 そうしたら、きっと怖くなっちまったんだろうな」 「そんなことあるわけないでしょ。あんたあたしが信じられないの?」 「そうだったのかもしれない。いや、信じられなかったのは俺自身なのかもしれない。 そんなやつらがいる中で、いつまでもお前の側にいられるような資格がないと思ったのかもしれないな」 「そんなことないわ。だってキョンは、……キョンはあたしにとって……。あたしはキョンが……」 「でも、もうそんなことはどうでもよくなった」 ハルヒは驚いて悲しそうな顔になった。心なしか、涙が浮かんでいるようにも見える。 「まさか……もうやめるって言うの?なんでよ!?」 ああ、そういう風に捉えますか。というか言い方がまずかった気はしないでもないな。すまん。 「いや、すまん。そういう意味じゃない。俺はこれからもSOS団の一人としてやっていくつもりだ。 俺が言いたいのは、そのなんていうか……簡単に言うと自信が付いたってこと、か?」 「何言ってるのあんた。全然意味わかんないわよ」 だろうな。俺もよくわからん。どうやって話を進めたらいいやら。 「昨日言っただろ。普通じゃない人間なんて見つかりこないって。あれは本当のことだ。 けど、それはそういうやつらがいないって意味じゃない。こっちからは見つけられないって意味だ。 だっていきなり『お前は宇宙人か?』って聞かれて、はいそうです、って、本物だとしても答えるわけないだろ?」 「じゃあどうしろっていうのよ!」 「別に何もしなくていいと思うぞ。強いて言うなら、そういうやつらが現れるのを願い続けることだな。 そうすれば、お前の周りにいるそいつらは、時がくれば自分からそのことをお前に告げてくれるさ」 「あのねぇ、あたしには気長に待ってる暇はないのよ。時っていつよ?こないならこっちから探すしか――」 俺はハルヒの小さな肩に手をやり、ほんの少しだけこちらに引き寄せる。 「その時ってのは今だ」 「あんた何言ってんの?」 「あのな、ハルヒ。実は俺、異世界人なんだ」 「は?」 さすがに目が点になってるな。そりゃそうか。 「俺は異世界人なんだ」 「ちょっと、あんた。本気で言ってんの?んなわけないでしょ」 「本気だ。俺は異世界人なんだ。まぁそりゃあ普通の人間には簡単には信じられないかもしれないだろうがな。 それにしてもせっかく待ちに待った異世界人が現れたってのに、信じないなんてもったいない話だよな」 「わ、わかったわ。仕方ないから信じてあげるわよ」 なんて簡単に挑発にかかるんだ。こいつは。 「だからな……」 「だから何よ」 ハルヒの肩に置いていた手に、ギュッと力を込める。 やべぇ、めちゃくちゃ緊張してきた。 「俺は普通の人間じゃない異世界人だから、俺と付き合ってくれないか?」 ああ、ついに言っちまった。 「は!?あ、あんたちょっとまじで言ってるの?」 「ああ、俺は大まじだ。お前言ってただろ?普通の人間じゃないやつがいたら付き合うって。ありゃ嘘か?」 「嘘なんかつかないわよ。けど……、まぁあんたが異世界人だってんならしょうがないわね。 わかったわ。そこまで言うなら付き合ってあげるわよ」 意外とすんなりいったな。『あんたが異世界人だっていう証拠は?』とか言われたらどうしようかと思ってたが。 証拠なんてないしな。行き方も知らない。まぁハルヒは実は自分で知っているわけだが。 俺が本物かどうかなんてたいした問題じゃないってことなのか? まぁなんでもいいさ。 「一つ聞いてもいい?」 「なんだ?質問にもよるぞ」 「あんたの言う異世界ってどんな世界?」 どんな世界、か。どう言えばいいものか。ここと変わんねぇんだよなぁ。 「基本的にはこことほとんど同じだな。よくいうパラレルワールドってやつか?人もほとんど同じだ」 「ふーん、てことはあたしとかもいるわけ?」 「ああ、いるぜ。ちゃんとSOS団もある」 「じゃあ、何が違うの?全く一緒ってわけじゃないんでしょ」 そうだな?何が違うんだ?あまり違和感がなかったからな。 「なんだろうな。人の性格とかに微妙に違和感があるくらいか?」 「例えば?」 例えば、か。何かあったかな。 「あ、長門の料理がうまかった。昼の弁当もうまかったし」 ハルヒの目付きが変わる。 「へえー、有希に弁当とか作ってもらってたんだぁ」 いや、まて、それはだな。いろいろあって、とりあえず落ち着け。な。 「……まぁいいわ。そっちのあたしはどんな感じ?」 どんなって言われてもなぁ。確かにちょっと違ってはいたが。力のこともあるし。 「……お前をさらに強気にした感じだ」 としか言いようがない。 「なるほどね。まぁいいわ」 「というかお前案外簡単に信じるんだな」 「嘘なの?」 「いや、そういう意味じゃないが」 「ならいいじゃない。あんたが本当って言ってるならそれでいいのよ。何か問題あるの?」 「いや、ちょっと話がうまく行き過ぎてて。ハルヒ、本当に俺でいいのか?」 「あたしがいいって言ってんだからそれでいいのよ。何?取り消したいの?」 「そんなわけあるか!俺はお前のことが、……本当に好きなんだから」 空いているもう片方の手もハルヒの肩に置く。 「ならさっさと好きって言いなさいよね。全く。こっちだって不安なんだから」 「そうだな、すまん。……ハルヒ、好きだ」 「あたしもよ。……キョン」 両の手に少し力を入れて引き寄せると、それに従いハルヒも近づいてくる。 ……あと20cm。 俺が顔を近付けるとハルヒも顔を近付ける。 ……あと10cm。 残りわずかのところでハルヒが目を瞑る。 ……あと5cm。 顔を少し傾け、目を閉じているハルヒの唇に俺の唇をそっと重ね―― コンコン! バッ!! ドアがノックされる音に慌ててハルヒの体を引き離す。 「入りますよ」 そういって古泉が入ってくる。そういえばジュースを買いに行ってたんだっけ? というか手ぶらじゃねぇか。どういうことだ?その満面の笑みは何だ? 「いえいえ、なんでもありませんよ。」 古泉の後ろには隠れるようにしている二人の姿が見える。 お見舞いのフルーツセットと、それとは別にお見舞いの品の袋を持った朝比奈さんとなぜか大量の本を持った長門の姿が。 「長門、それに朝比奈さんも。来てくれたんですね」 「……来ていた」 「キョ、キョンくん、具合はどうですかぁ?」 ん?なんか様子が変だ。朝比奈さんに至っては顔が真っ赤だし。 ってハルヒも顔が真っ赤になってるな。しかも口を開けたまんま固まっている。どういうことだ? 「古泉、何かあったか?ジュースはどうした?」 「ああ、そういえば飲み物を買いに出たのでしたね。うっかりしてました」 「は?じゃあお前はジュースも買わずに今までどこ……って、お前まさか!?」 「いやあ、この部屋を出たところで偶然このお二方と会いましてね。中に入ろうかとも思いましたが……ねえ?」 と、長門の方に振る。 「……いいところだった」 嘘だろ?まさかこいつら全部聞いてたんじゃ。 「……古泉、どこからだ?」 「そうですね。『すまなかったな。迷惑かけて』からですね。最初の方でしょうか?」 最初の方っていうか一番最初だぜこのヤロー。 ……そこから全部聞かれてたってことなのか?そんな馬鹿な。ぐあっ、死にてえ。 思わず頭を抱える。ハルヒはまだ固まっている。 「キョンくん、気を落とさないでください。だいじょうぶですよぉ。カッコ良かったですぅ」 いえ、朝比奈さん。それ全くフォローになってませんから。 「まぁいいじゃないですか。一件落着ですよ」 くそっ、こいつに言われると腹立つな。 どうでもいいけどお前間違いなく開けるタイミング狙ってただろ。 「さて、なんのことでしょう?」 くそっ、いまいましい。 ハルヒいい加減正気に戻れ。 「わ、わかってるわよ。うっさい」 まぁいいさ。これでこの一件は無事に終わったってわけだ。やっぱりこういう世界が一番だな。 あんな悪夢のような時間は出来ればもう過ごしたくないものだ。 俺はここでこのSOS団のみんなと俺は楽しく過ごしていくさ。 だからそっちのSOS団もそっちで楽しくやってくれ。そっちの俺たちも仲良くな。頑張れよ、『俺』。 「とりあえず元気そうで良かったですぅ」 「安心した」 二人からちゃんとしたお見舞いの言葉をもらっていると、 「やっぱりキョンを雑用係にして酷使し過ぎたのがまずかったのかしらね」 だから自覚あるならやめろっての。 ハルヒは朝比奈さんが持ってきた俺へのお見舞いのメロンを食べ終えて言った。 ってお前、そのメロン全部食ったのかよ。それ俺のだろ? 「そうかもしれませんね」 古泉、お前思ってないだろ。とりあえずその手に持ったバナナの束を置け。 「だからキョンには新しい役職を与えて、雑用はみんなで分担することにするわね」 そう言ってハルヒはどこからともなく腕章とペンを取り出した。 って、どこから出したんだよ。ってかなんでそんな物持ってんだよ。 キュキュっとペンを走らせ、それを俺に突きつける。 「これでどう?嬉しいわよね」 渡された腕章には大きな字でこう書かれていた。 『団長付き人』 やれやれ、これからも大変そうだな。 今日からは俺も異世界人、これでSOS団の一員として新しくスタートってわけだ。 確かに向こうに行ってた時間は悪夢のような時間だったかもしれない。 けど、こうなってみると、この結果になったのは間違いなく異世界のおかげと言えるだろう。 異世界でのSOS団の出会い、ハルヒとの出会いがなければ俺はハルヒに告白なんてできなかったたろう。 ハルヒ。ひょっとしてこれもお前の望んだとおりの結果なのか? 異世界との交流を通して、俺に答えを出すことを望んだのか? まぁなんでもいいさ。 お前も望んでくれるなら、俺はいつまでもハルヒの隣にいたいと思う。 「ああ、ありがたく頂くよ。これからもよろしくな」 さて、これからはどんな新しいものとの交流が待っていることやら。 今から楽しみだぜ。 「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 「いや、それ朝比奈さんが俺のお見舞いに持ってきたやつだから。しかも俺は食ってないぞ」 周りを見渡す。長門が食べていた。 長門はハルヒの方を向いて僅かだけ微笑みを感じさせる顔で言う。 「プリンくらいはあなたから貰ってもいいはず」 ◇◇◇◇◇ 最終章後編へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1578.html
キョン「ただいまー」 ハルヒ「足りたでしょ?」 キョン「あぁ。すき焼き肉1パック498だった。」 ハルヒ「広告に書いてあったでしょ?ちゃんと見なさいよね?」 キョン「いっちょ前に主婦じゃねぇか…ハルヒ。」 ハルヒ「ふふん♪」 キョン「なぁハルヒ、久しぶりに朝比奈さんたちも招待しないか?」 ハルヒ「いいわね~っ!じゃお肉足りないからもっかい買って来て~。はい1000円。」 キョン「…………」 俺はハルヒに渡された1000円を握り締め、近くのスーパーへいわゆるおつかいに来ている。 しかし二度目のご来店となるとさすがに恥ずかしいな。 俺は先程と同じ段取りでカゴにすき焼き肉を二つ放り込む。 「さて、」 お会計を済まそうとさっさとレジへ進もうとしたその時、何やら見たことのある二人がカートお押しながら仲良く並んでショッピングを楽しんでいた。 古泉とみくるさん夫妻だ。 全く…そのままジャスコかなんかのCMに出ればいいってくらいの美男美女だ。 どうせ後で呼ぶのもあれだしな、今声をかけておこう。 買い物カゴを持ったまま不審者の様に古泉たちの後を追い、声をかけた 「おい古泉。」 「なんでs…」 恐る恐る振り向いた二人の顔が俺を見た途端にいつものニヤケハンサム面と天使の微笑みに変わった。 「キョンくん!!」 声をかけた古泉よりも真っ先に返ってきたのはみくるさんのエンジェルボイスだった。 「おやおや、奇遇ですね。ハルヒさんはどうしました?」 「いや、ハルヒに頼まれた使いなんだ。」 このニヤケハンサム面を拝むのも何年ぶりだろう。 いやしかしまさかこいつが俺の中の永遠のアイドル(旧)朝比奈さんをモノにするとはっ!! こいつめっ…!こいつめっ…! などと考えてる場合じゃないな…。 早いとこ伝えておこう。 俺が事の説明を話しているとみくるさんは目を輝かせて 「いいですね~♪」 と言って古泉に同意を求める様な仕草をした。 「では僕たちも材料を買いましょうか。」 快く古泉は頷いた。 「肉はもうこれで十分だからな。あとは適当に野菜とかで良いんじゃないか?」 「そうですか。では、ビールとおつまみを見に行きましょうか。」 「だな。」 「じゃあ私はお野菜見てきますね♪」 そしてみくるさんは頭の上に「♪」でも出てきそうなくらいの足取りで青果コーナーへと向かった。 さすがにビールとおつまみ代を古泉…いやみくるさんに出さす訳にはいかないな。 少々痛いが乏しい俺のポケットマネーで賄うとしよう。 古泉と飲むのも成人して以来か… 酒やつまみを適当にカゴに放り込みながら古泉に話しかけた。 「なぁ古泉…」 「何ですか?」 「お前、成人式以来長門に会ったか?」 「いいえ。しかし毎年年賀状は送ってくれますし、さほど心配もしてなかったのですが…。」 そう、長門は毎年あのパソコンでうった様な文字で年賀状を送っては来るものの…それ以外に長門と連絡を取ることが無かった。 しかし年に一度の生存確認で大概俺とハルヒは安心していた。 何てったってあの長門だ。 今になっては「元」宇宙人だが。 今から約7年前、高校を卒業して1年たち、卒業後もしばらくは行われていたSOS団の活動も治まって、俺とハルヒは社会に程々に順応していた。 ハルヒくらいの頭なら大学へ行ってもおかしくないが… ある日突然「キョンっ、一緒に暮らすわよっ!」な~んて言われた日にゃ俺もびっくりしたね~。 なんせあの不思議大好き野郎と暮らすんだからそりゃもう高校時代より疲れる生活が待っていること請合いなので俺も断ったんだがな…。 俺の安月給じゃ生活できんぞってな。 ところがあのハルヒは、「あたしも出すわよ、生活費くらい。」 最初自分の耳を疑ったがその後にまた俺の心の朝日新聞の一面を飾る様な一言がハルヒの口から言い放たれた。 「好きなのよ…あんたのことっ!!」 なんて強引な告白の仕方があるだろうか? それからと言うものハルヒは気が強い普通な女の子となってしまったのである。 その時の古泉曰く、徐々にハルヒの世界を変える力は失われていっているらしかった。 「そうなれば僕の能力も無くなり、朝比奈さんや長門さんたちそれぞれの役目も終わります。」 両手を拡げそう言った後、俺は気付いた。 ハルヒを見守る必要が無いなら古泉を除いた二人はどうなるんだ? 古泉は元は普通の人間、まぁ朝比奈さんもそうだが、そうなると朝比奈さんは未来に帰り、長門は消えてしまうんじゃ… 「鋭いですね…」 ニヤケた面が真顔になった。 古泉と意見が合ったりするのは年に数えるくらいだが… 珍しい事もあるもんだな。 「おや、僕はただハードな青春を共にした仲間と離れたくないだけですよ。」 「あとどれくらいで無くなるんだ…?」 「保って2日といったところでしょうか?」 「行くか…!急いだ方がいいだろう?」 「わかりました。」 「僕は朝比奈さんに話をつけてきます。長門さんを頼みました…!」 「わかった!!」 急いで走って着いたあのマンション… 卒業した後も長門宅には行ってたからな、自宅はここで間いない! 急いでベルをならした。 ……………………… 出ない!?まさか…! 「長門!」 珍しく長門がエントランスから直接鍵を開けにきた。 少し目が潤んだ様に見えるのは気のせいか。 そしてゆっくりとエントランスのドアが開けられた。 「長門っ!話がある!!」 「………(コクン)」 「あのな、長門…」 「私もあなた達に話があったところ。」 「涼宮ハルヒの能力があと26時間42分8秒で失われる。だからお別れを言おうとした。」 「その事なんだがなぁ長門、俺はそうはさせないぞ…。」 「……。」 「いつだったか俺言ったよな?お前がもし情報なんとかに消される様なことがあったらハルヒに全部話して何としてでも見つけ出すって!」 「以前は私のバグが原因。でも今は任務が終わった。だから情報統合思念体は」 「長門っ!!」 俺が叫んだせいで長門が少し驚いた顔をした。 くそっ写メ撮っとくんだったぜ… 「結局はその親玉に消されるんだろ?そんなの俺は認めないぞ!!」 熱くなり過ぎたか、俺は長門の腕をつかんでいた。 その時、長門の頬をわずかな水分が滴った。 「だからな、長門。今からハルヒに全部話そうと思うんだ…。」 「…そう。」 俺は長門の腕を掴んだままハルヒの待つ自宅へと走った。 そしてマンションの前に着くと先に古泉と朝比奈さんが居た。 あとから聞いた話しによると、朝比奈さんは判りやすく荷物をまとめて準備していたという。 なるほど、この時すでに……っ!!! 「キョンくん、……ぅぇっありがとう~…!!グスン…。」 古泉の隣りの朝比奈さんの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。 「では、行きましょうか。」 「おう。」 「ハルヒ!」 「なっ…何!?みんな揃って…!?」 いやぁ~あの時のハルヒの顔も見物だったね。 なんせみんな血相変えて走り込んで来たんだからな。 「いいですか涼宮さん、これから僕らが話す事は全て事実です。」 それから小一時間今まであった出来事を洗いざらい吐いてやった。 長門が宇宙人、朝比奈さんが未来人、古泉が超能力者でお前はとんでもない力を持っているという話。3人の役割、そして役目を終えた長門や朝比奈さんがいなくなると言う事を。 「有希を消しちゃうなんて許しがたいことだわっ。それにみくるちゃんも!団長の許可無しに未来へ帰っちゃうなんて駄目じゃない?!」 ハルヒの言葉を聞いた朝比奈さんはさらに涙の量を増やし 「涼宮さぁ~ん……」 声を荒げて泣き出した。 そしてハルヒから 「で、有希やみくるちゃんはほんとにそれでいいのね?」 と確認されると長門と朝比奈さんは頷いた。 やっぱり団長は頼りになるなと実感させられたときであった。 「有希、その能力はどうやって使うの??」 「心の中で、今まであなたが思っていた通りの私達を想像すればいい。私も協力する。」 そう言ってハルヒと長門は目を瞑り、念じ始めた。 しばらく瞑想していたハルヒと長門に割って入る様で悪いが俺は万能宇宙人である長門に最後の疑問を聞いてみた。 「すまんが長門、この後の歴史はどうなるんだ?」 「情報の操作は得意。今はそれも含め涼宮ハルヒに協力している。」 「そうか。そうだったな。」 「そう。」 それからややあって、長門は一言だけ俺に告げた。 「終わった。」 その場にいる全員の肩の荷が降り、朝比奈さん達はペタンと腰を下ろし、また泣き出した。 ハルヒは笑顔で俺に言った。 「こんな面白いこと黙ってたなんて信じられないわ!!今夜はみんなでキョンに説教よ!!」 その後俺とハルヒが住むマンションで「すき焼きを大いにた盛り上げるための涼宮ハルヒのキョンを説教する会」が行われた。 ハルヒが消えちまった後の鍋もうまかったがあの時のすき焼きも申し分ないくらいうまかったな。 前置きが長くなったがその後普通の女の子になった長門を成人式の日以来見ていない。 出るか不安だったが長門の携帯に何年ぶりかに電話をかけてみる。 ……………… 「…もしもし。」 「長門か?」 「…。」 恐らく受話器の向こうで頷いたのだろう。 「久しぶりだな。」 「…。」 あの、長門さん?受話器の向こうの頷きは俺には見えないから少しはしゃべってくれよな。 「…わかった。」 「変わらないな。」 「…そう。」 「今日俺んちにみんなを呼んでまたすき焼きでもしようと思うんだが。」 「くるか?」 「……行く。」 「そうか。ならもう古泉と朝比…みくるさんは来てるからな、待ってるぞ。」 「わかった。」 そう言って長門は電話を切った。 長門の家からここまでは電車で一駅、さほど来るのに時間はかからないだろう。 ハルヒとみくるさんも仲良くすき焼きの準備を…… 「みくるちゃぁん!折角だから裸にエプロンやってみない!?」 「ふぇ~~!!」 ハルヒ!人妻バージョンのみくるさんも見てみたいのは山々だが夫の前だ!!自重せい! おい、古泉、ニヤけてないでお前もなんか言え! 「変わらないのはあなたもハルヒさんも一緒ですね。」 とチラシのモデルから雑誌のファッションモデルに進化したスマイルで俺に言った。 しかたないな…。 「やめろ!ハルヒ!!一昔流行ったしゃぶしゃぶじゃ無いんだぞ!」 懐かしいな…まさか今になってこのやりとりをするとは。 「しゃぶしゃぶ?今はすき焼きを作ってるのよ??」 「わかってる!これ以上言わせるな!!」 古泉夫妻がそれをみて笑っていた。 古泉、後で覚えておけ。 「それは恐ろしいですね。」 こいついつの間にビール一本空けやがったっ! 「一樹くんは酔ったら手強いですよ?」 みくるさん、それはどう手強いんですか? 「ふふ♪禁則事項です♪」 人妻最高!……っ!? 「キョン?何鼻の穴膨らましてんの!?」 油断した…ハルヒを止めていた途中だった… ―ピンポーン― するとチャイムが鳴った。 きっと長門だろう。 インターホンのモニターを覗き込む。 ……………誰だ? モニターの向こうには髪は肩まであり、 背は高くないもののスラッとしてて清楚な感じの女性が立っていた。 「なぁハルヒ、知り合いか?」 「有希じゃないの―??」 準備していたハルヒはエプロンで手を拭き、いそいそとモニターに目を向けた。 「すいませんどなたですか―?」 「…長門有希………………です。」 『ぇえ―っ?!!!!』 一同は驚きの声をあげ、俺を挟み込むかの様にモニターを我先にと覗いた。 みくるさん、肉の塊が…そして古泉、顔近いぞ。 「今開けるわね!!」 鍵を開け、進化した長門をリビングに招待する。 しかしこうも変わっちまうとちょっと畏まってしまうな。 「変わったな、長門。」 「そう?」 「背も少し高くなったんじゃないか?」 「あれから…少し伸びた…わ。」 伸びた…わ って…。 少し無理してるな、ここでは普通の長門でいいんだぞ? 「そう。」 「人ってのはこうも変わっちゃうもんなのね―。」 ハルヒは長門を珍しいものを見る様な目で長門を見つめる。 無理も無いがな…。 あの時は制服しか着てなかったし、今はan〇nにでも乗ってそうなくらいの美人だ。 「あれから何か変わった事はあったか?」 「特には。強いて言えば制服が入らなくなった。」 今のは長門なりのジョークだろう。古泉も相当ウケている。 「フフフ………ケラケラケラwwwwww」 ウケすぎだろ!いかん、こいつ完全に逝っちまってる。 「しかし突然そんなに変わられるとさすがの俺も驚いたな。」 「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイズに基本的な身体の成長は無かった。 あの時の情報改竄によりあなた達と同じ有機生命体になったことにより、今までの反動が訪れた。」 「よくわからんが人間になって遅れた分一気に成長したってことか?」 「そう。」 久々に長門の顔を見たが前の幼かった長門とは一転、ハルヒやみくるさんが居なければ確実に心魅かれていただろうね。 「ところで長門…前みたいに金に自由は利かないだろう?仕事とかしてるのか?」 元宇宙人に超現実的な質問をしてみる。 古泉は元機関とやらの誼で何かの研究をしているらしい。 かという俺はハルヒの紹介で夫婦揃ってA〇ショップの店員だ。 携帯ショップの何が悪い! 言っとくがハルヒのユニフォームの似合いようははんそk…話が脱線したな。 「ファッションデザイナー。」 !? 「有希―!すごいじゃない!?」 「長門さん昔から多才でしたもんね~♪」 「マッガーレ」 「こら古泉!スプーンを力ずくで曲げるな!! しかし長門、専門学校とか行ってたっけ?」 今日日学生のバイト代で行ける学校なんてどっかのお笑い芸人養成所くらいだ。 「親玉から仕送りみたいなのがあったのか?」 「定期的に。その一部を蓄えていた。」 「そんなとこまでしっかりしてたんだな。」 そんな話をしながらビールをちびちびやっていた。 すると長門はハルヒ達のいるキッチンへと向かって行き 「手伝う。」 と一言言い、下準備を始めた。 あの時からようやく人並みの生活をできる様になったのか。 そういや表情に乏しく、この俺の眼力でようやく変化したのが伺えたあの長門だが、今は誰が見ても分かるだろう。 楽しそうだった。 笑いながら作業する美女3人を見ていると心から幸せだと思うね、うん。 「はたしていつまで続きますかね、永遠にこの状態だといいのですが…。」 いきなりマジに戻るな!空気読め!顔を近付けるな!酒臭い!! 「……。今我々はその長門さんの元親玉、情報統合思念体について研究しています。みくるさんにも手伝ってもらってね。」 「何?!完全に情報を操作したわけじゃ無かったのか?!しかもみくるさんまでそのいかがわしい仕事を…」 「えぇ。いくら前の長門さんでも何億年前の情報から操作するのは無理だったと思われます。」 「で、何かまずい事でもあったか?」 「もしあなたが大事にしていた息子をさらわれて、もうあなたのもとに戻らないと分かった時、あなたならどうします?」 「一生さらった奴をゆるさねぇな。」 「そうです。」 まさか…………。 情報なんとかがそんな子供思いのお父さんだったとはな。 「ということは、結果長門は情報思念体から千切られて無理やり人間にされちまったようなもんか…。」 「本人の意思もありましたし、無理やりという表現は正しくないですが。まぁそんなところです。」 そうだな、俺が長門の親ならあんな可愛い娘をさらった奴に制裁をくわえる。 「しかし今のところ、何の動きもありません。安心してもいいでしょう。」 「そうかい。ま、長門の親以上に怖いのがうちのハルヒなわけだが。」 なんだがまた俺だけ2Gくらいの圧力がかかったくらい体が重くなった。 飲み直すぞ、古泉。 「はいw」 「できたわっ♪」 そうこうしてるうちにすき焼きが出来上がったみたいだな。 ん~いい匂いだ。 さっきのことは一旦忘れて、今日はみんなの再会を祝してSOS団すき焼きパーティーだ。 そうだ、今度また不思議探ししないか? 駅前とかじゃなくどっかの温泉とかな…。 ん、うまい!!! 涼宮ハルヒのすき焼 ―完―
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/29.html
110 名無しさん@秘密の花園 2006/06/23(金) 22 51 19 ID YMGUBB7I 谷口→国木田 ↓ キョン⇔古泉←執事 ↑ 生徒会長 きみどり ↓ 長門←朝倉涼子 ↑ ハルヒ→みっくるんるん←メイド ↑ ↑ ENOZ 鶴屋さん 111 名無しさん@秘密の花園 2006/06/24(土) 01 52 16 ID 6GUHph/H メイド×みくるか その発想はなかったわ 112 名無しさん@秘密の花園 2006/06/24(土) 17 39 18 ID yAz46E8x 110 阪中さんと誘拐犯の少女も足しといてくれ。 あと上のはイラネ。 113 名無しさん@秘密の花園 2006/06/25(日) 12 48 53 ID HndEAAO1 こうだろ きみどり ↓ 朝倉涼子→長門―─┐ 誘拐犯の少女─┐ ↑ ↓ ↓ ↓ 阪中さん→ハルヒ→みっくるんるん←森さん ↑ ↑ ENOZ 鶴屋さん 114 名無しさん@秘密の花園 2006/06/25(日) 12 50 19 ID HndEAAO1 やべw 115 名無しさん@秘密の花園 2006/06/25(日) 18 06 50 ID jJc1a469 ┌―――→ きみどり ↓ ↓ 朝倉涼子→長門←─キョン妹┌―─―誘拐犯の少女 ↑ │└─┐ │ │ ↑ ↑ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ │ │ 阪中さん→ハルヒ→みっくるんるん←森さん │ ↓ ↑ ↑ │ 樋口さん ENOZ 鶴屋さん←大みくる―─┘ よし、とりあえず乱交パーティーだ。 116 名無しさん@秘密の花園 2006/06/25(日) 23 55 15 ID WyRl0MYk 最終的に矢印がほとんどみくるにいってるな。 117 名無しさん@秘密の花園 2006/06/26(月) 02 40 39 ID ZSKK7e// なんで阪中さんと朝倉が両思いなんだよw 118 名無しさん@秘密の花園 2006/06/26(月) 04 40 33 ID 7ZHYab5L 矢印って「受け攻め」の意味じゃないのか?